財産没収稽古2017.06.13

今日は昨日まで仕上がった1ページ半の通しから。刷新したセリフの割り振りで、ある程度ざっくりと決めた動きを確認します。

通して見て、大きく二つ、改善点。一つは、恵美ちゃんが何のタイミングでダンスをやめて椅子に座るのか、ということ。オープニングそうそう、恵美ちゃんが踊ることにしているのですが、その踊りの終わりで、すぐに椅子に座りたい、と思っていたのです。しかし、踊る場所から椅子の距離は少しあり、さらにダンスが終わっても椅子の上には高杉氏がしばらくおります。空白の時間ができてしまうのですが、一旦はけるということになると、再び登場するタイミングや意味もまた見つけなくてはならず・・・

暫定で、踊り終わったら、そこに倒れ、高杉さんに起こされて椅子に座る、という動きをつけました。

そして、まっちゃんが高杉さんをおそう問題。
おそうとは言ったものの、最初から暴力的に行くわけではなく、最初は徐々に、恋人らしく、キスをしようとしたり、何なら自分の方を向いてほしいと顔に手をあてたりするようなところから、体を押し倒して瓶で頭を殴るところまで、を少し具体的に決めて行きました。

椿姫のオペラの音楽を流してやってみたのですが、それで即興的に踊ってもらうと、意外とダンスのようでもあったので、少し具体的な動きというよりはダンスに寄せてみます。

休憩後は、まだ手をつけていないところの、セリフの割り振りから。

ここでとてもとても大きな問題にぶち当たります。劇中で「私たち、あの大きな黄色い家で、普通の暮らしをしていたのよ」というセリフが出てくるのです。これのどこが問題かというと、

すなわち、ここがどこなのか、を定義してしまうセリフなのです。

本来の戯曲では、ここは「線路の上」、外です。そしてこの線路の上から、遠くに、ウィリーの住んでいた、差し押さえにあった黄色い家が見えています。それをさして「あの」と言っているわけです。

しかし私たちは、今演者たちのいる場所を「差し押さえられた家」としています。誰の家かわからないが、行政に差し押さえられた家に、フラッと酔っ払ったテネシーが入り込み、そこで劇を創作する、という設定なのです。

であるにもかかわらず「あの」と遠くをさして、差し押さえられた黄色い家の話をするのは、かなり、無理が出てきます。ちなみにこの部分、初演でどうしていたかというと、「大きな声で叫ぶ」ことで、ごまかしていました。

ということを思い出し、4人で大笑いであります。
黄色い家問題は2年前もおそらく、はっきりあったのです。
しかしそれを、声の強弱で、切り抜けようとしたのでした。

いや、正直言うと、比較的全てのシーンをそんな感じで、感覚的に、声の強弱やリズムなどで構成してました。それがとても効果的に見える部分もあったし、もう少し練った方が良かったと思うところも、今回の稽古でたくさん見つかります。

パニックだ、と言いながら、パニックという英語の発音をネットで調べたりしながら(⬅︎現実逃避)、いろいろ話し合うこと数十分。ふと、普通ならこのセリフって、ここまでのセリフのやり取りに呼応していないよな、と気がつきます。

アルヴァ今、お墓の中なの、とウィリーが言うと、大変だね、とトムが返事します。しかしウィリーは、何よ、半分もわかってないくせに、と毒づき、上記のセリフを発するのです。

普通なら「何よ、半分もわかっちゃいないくせに!私、あの黄色い家で、アルヴァの最期を看取ったのよ!」とか言うはずです。なのに、あの家で「普通の暮らしをしていた」ということを主張するわけです。

この齟齬を指摘したところ、高杉さんが、「それや!」と言いました。つまり、ウィリーは、姉のアルヴァの綺麗なところばかり言っているけれど、アルヴァからすれば、それはいいところばかりの説明に聞こえる。私は、普通に、暮らしていた。トイレも行くし、お腹も空く。というような主張にしてみてはどうかとなったのです。

そうすれば、このセリフは、姉のアルヴァからウィリーへのセリフとしておさまり、この後の思い出話にスムーズに移行できることがわかりました。

その続きは、割とスムーズに割り振りが進みました。「この財産を没収す」と、この場所にかけられた札を見ていえば、ここが差し押さえにあった場所であることがわかる。

とにかく、この人は誰なのか。
ここはどこなのか。
どういう設定なのか、ということを明示できるところまで、進みました。