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私の家族 12月12日

作り手の頭に浮かんだ構想を、言葉という輪郭のないままに共有することはできない。
1場の稽古を繰り返す山口さんは、自分の構想と言葉との妥協点を探っているように見えた。それが端的にあらわれたのが、オモテさんという登場人物の長台詞を改変しようと提案したときの言葉だ。
「今は具体的に説明しすぎているから、もっと抽象的にするか例え話にするか、まだ方法はわからないけれど考えます。」
『私の家族』は具体的な出来事の集積で物語が進む。戯曲の構成も緻密で、一見するとオーソドックスな会話劇に見える。しかし山口さんが目指しているのはそこではない。具体的な物語を借りながら、より大きな何かを表現しようと模索しているように思える。
言葉にした途端にこぼれ落ちてしまうその何かをできるだけ損なわずに、役者や観客と共有していく。その遠大な作業を手助けできる言葉を私も探っていきたい。

文責:大貫