2017年「財産没収」」カテゴリーアーカイブ

財産没収稽古2017.7.11

今日は短い時間の稽古の日。

美術の夏目さんが来てくださったので、まずは通し。6月までにできた下地をお見せします。演出助手の下野くんも今日から合流です。嬉しいです。

2週間ほど経っているので、忘れているところもありながら、まずまず通りました。通した中で、「森へ分け入る入り口」感のある箇所が3箇所もあること。やはり5ページの始末がついていないこと、作ったダンスをどのように反映させていくか、などが課題となって見えてきました。そして発語の問題も。

残りの時間、まずは1ページ目をじっくり当たっていきます。このページのセリフにある「貯水槽」が何なのかが気になる、と高杉さん。セリフを台本どおりのストーリーでなく、こちらで掘り下げた設定に当てはめていくので、簡単に馴染んでくれないのは当然ですが、だからと言って誤魔化さないというのが今回の再演の楽しみ。

正直ベリーホットな稽古場で、回らぬ頭を回転させます。ちょっと調べてみると、貯水槽、当時のアメリカでの感染症の原因の一つでもあったそうです。菌が繁殖してしまう格好の場所。元々ある「お姉さんが肺病で死んでいる」という設定がにわかに浮かび上がってきます。

命も源でもある貯水槽に、繁殖した菌のせいで、死にゆく人々。初演の時もなんとなく、貯水槽には死体が浮かんでいるというイメージを持っていました。

そこで、貯水槽に関わるセリフはすべて、恵美ちゃんが言うことにして、つまり、えみちゃん演じる姉=死者が言うセリフとして解決をつけ、1ページを流してみると、すっきり、面白く分かりやすくなりました。トルソーとえみちゃんの倒れる角度、まっちゃんが高杉さんに声をかけるタイミングなど、細かい調整をしながら何度か通します。手応えのある稽古でした。

財産没収稽古2017.07.05

今日から新しく借りた稽古場で。

恵美ちゃんが、この一週間の稽古おやすみ期間中に、いろいろと考えてきてくれた動きについて、まっちゃんと高杉さんが、受け取っていく。15個の、テキストから読み取れることばを動きにする。恵美ちゃんとしてはもう少し、動詞が欲しい、とのこと。

バレエで鍛えられた体が、紡ぎだす動きは、一朝一夕では真似できない。

そういうことを憂いながら、高杉さんはただただ、恵美ちゃんの動きを取り込もうと真剣。
「楽しい」「楽しい」とつぶやきながら、まっちゃんはもくもくとこなしていく。
二人の素直な心と体に乾杯。

ある程度練習をした後、3人同じ動きを、スタートするタイミングをずらして動いてみる。
いくらでも見ていられる、面白さ。

その間、山口は、台本から追加でやれそうな動きを探す。「舐める」「探す」「凧揚げする」「燃殻が手につく」など。

この動きを、いろんなシーンに転用する。「財産没収」では、踊るという描写がとても多く出てくるのだが、ダンスにとどまらず、使いたいと話し合う。でもそれが、物語を阻害するものにならないように。深く、わかりやすく、面白くなるように。

恵美ちゃんが、動きの中に役を引き受けていきたい、と言ってくれる。
全てを削ぎ落とすことが、決して良いわけではないこと。
そうすることで、物語をぶち壊さない作用が見込めるだろうと思う。
私たちはあくまで、テネシーの物語を借りるということ。

発語にも、同じような考えが適用できる。

新しい稽古場は、いろいろなん有りながら、やはり、嬉しい。

財産没収稽古2017.06.24

今日は、残りの2ページ(前回までは全7ページと書いていたのだが、やっていくうちにト書きが増え、8ページになりました)のセリフの割り振りを、暫定で決めるところから。初演でもそうだったが、ラスト周辺はだまし絵的にずらしたりせずともそのまま使えるセリフが多いので、サクサクっとセリフを割り振ることができる。これは再演の強みだと思った。

初演の後半の動画を見る。意外と動いていないことがわかる。つまりセリフを発しているだけのイメージ。もうすこし動きを入れていたと思っていたのだが、記憶違い。

それから実際に何度か、決めたセリフの割り振りでとおしてみる。ダンスをどう作るか、という話を恵美ちゃん発でしてくれる。やりたくないダンス、やりたいダンス。私が安易に「アメリカンなダンスを」というたばかりに、恵美ちゃんは言いにくそうに「こういうのは・・・したくないんです・・・」とブギウギダンスのようなものを真似してくれる。

確かにそれは違う。確かに違うのに、確かにそういうの思い浮かべてた(稽古場では言わなかったが)。

恵美ちゃんは、一つの一連の動きを作り、それを大きくしたり小さくしたりしながら随所で使ってはどうかと提案してくれる。

それで私からも、今舞台上で演者がやっている動きの「動詞」をピックアップしてみて、その動きをつなぎ合わせることで振り付けを作ってみてはどうかと提案した。

そこで高杉さんが、ダンスの話をしているのに、全然別のことを考えていた、と告白して、オープニングについての提案をしてくれた。

今、オープニングは初演と同じく、追いかけてきた恋人に気がついたテネシーが、自分で部屋の電気をつける、ということにしているのだが、それを、恋人につけてもらってはどうか、ということ。

私は、初演の時から、ここでテネシーが電気をつけることにずっと違和感を持っていた。暗いところで作業をしていた人が、他者がやってきたから電気をつけるって、そんな気遣い、するだろうか?創作に夢中になっているのに、いや、それより酔っ払っているのに!通常なら恋人が電気をつけて、テネシーの酔いを醒ますぐらいがいいはずなんだ。そう思ってた。

でも思っていたのに、言わなかったし、解決しようと思ってこなかった。だって、そのままでもなんとなくうまくいってたから。それに気がつく。演出として杜撰。

恋人が電気を付けることにすると、テネシーは転がっているトルソーの方に、恋人を避けて偶然近づくことができる。「この素敵な人形」というセリフ(初演では恵美ちゃんが言ってた)を、これまではまっちゃんが言ってた。でも、恋人が言うセリフとしてはずっと違和感があったので、とりあえず暫定かな、と保留にしていたのだ。それが、高杉さん、つまりテネシーのセリフになる。

そう、まさに、このセリフは、テネシーのセリフなのだ。

そうすると、その後に挿入するダンスについても、まっちゃんがなぜかトルソーと踊る、というようなことをしなくて良くなる。

このオープニングの改善案には、興奮した。興奮したと同時になぜこれを初演で私が思いつかなかったのか、と残念に思ったが(だってずっと違和感感じてたのに)、それもこれも、あらゆる様々な因果関係で偶然今、高杉さんの脳がピピっときたわけで、2年前の、2015年6月の稽古では、誰も、思いつく余地がなかったのだ。

ということにして、落ち込みもそこそこに、次へ。

恋人とテネシーが、「青い鳥」というカフェの裏のゴミ箱の近くで出会った、というイメージを、私たちは初演から共有している。そこで二人はなんとなく惹かれあい、恋人同士になった。それをどこかでやりたい、と高杉さんは切望しており、逆にこのイメージを提案した私には、どこにそんな隙があるのか、さっぱりイメージできなかった。

でもここで、そのシーンができそうということに、前回の稽古でなった。酔っ払いが三人で喋っているような、セリフの割り振り。今日はさらにそのセリフの割り振りを更新して、作ってみる。必要最小限の美術でやるので、ゴミ箱感、というのは出にくいのであるが、それでも、なんとなくわかるような感じに出来上がった。

稽古の最後に通しをしたかったので、その前にもう一度、ラストを通してみる。やってみたら、テネシーが、最後に、恋人に自分を襲わせる隙を作っているように見えて、これまた興奮(演出的に)。でも恋人はもう、去ってしまう。これって、まさに、テネシー・ウィリアムズ。というわけで、よりそういう風に見えるように、動きを微調整。

それから、先ほどの高杉氏のオープニング提案を実際にやってみて、通しをした。

ランタイムは35分だった。ダンスや間を作っていけば、予定通り40分程度になりそうだ。

通しが終わって最後の1時間、振り返る。5ページが丸ごと、「よく分からない」こと。
7ページで急にダンスをしだす意味、とか、

恵美ちゃんにどうやってローズ的要素を入れるか(ローズはテネシーの姉。恵美ちゃんは今、あくまでアルヴァ、という、主役のウィリーの姉でしかないのだが、できればローズ的な要素も入れたい)

恵美ちゃんはあくまで高杉さんの妄想上の人物であること。恋人とは違うということをお客さんに伝えたい、ということ。

など、諸々問題を共有して、6月の稽古を終了した。

 

財産没収稽古2017.06.23

この日は実に2時間のみの稽古。
前回の稽古が、じうのお熱で早退ということになったので、私抜きで3人が進めてくれたシーンについて、説明を受け、実際にやってみてもらった。

全部でA47ページあるこの戯曲。
現在、5ページ目を検討中だが、ここまでの流れを説明すると、

テネシーウィリアムズが、ふと、空き家に入る。酒瓶片手に、一室に侵入すると、そこには姉さんが座っている。テネシーは驚き、姉さんに触れようとすると、ふと消えてしまう。

テネシーはこの空き家の雰囲気と姉さんの幻影から、インスピレーションを得て、戯曲を書き始める。そこへ恋人が追いかけてくる。恋人は、テネシーを連れて帰りたいのだが、テネシーは戯曲を書くのに必死だ。時折セリフを口走りながら、妄想を文字で捉えようとしている。恋人はテネシーを襲い、テネシーは恋人を瓶で殴って気絶させる。

テネシーの紡ぎだす劇世界は、部屋に転がっていたトルソーや恋人をも利用してどんどん広がっていく。ふとテネシーは、幻影の姉をもう一度「見る」。テネシーはいよいよ劇世界へ没入する。

という感じまで進んでいる。

で、今日。

恵美ちゃんは、不動産を差し押さえに来た州の調査官。オープニングで高杉さんが見た「姉さんの幻影」は、実はこの調査官で、彼女はテネシーとは違う時間軸で、その家を差し押さえに来ている。時間軸が違うので、テネシーにとって彼女は幻影だし、彼女からしても、テネシーには一切気がついていない、という状況。

という前置きを経て、
高杉さんたちは、私が休んだ間に、

*物音に気がついて、恋人と息をひそめる。

*調査官がやってきたようだ。

*鑑定士が懐中電灯で辺りを照らしながら家の中を歩いている、テネシーたちは、彼女に気付かれぬようこそこそとしゃべる

というシーンをこの5ページを使って、作ってくれていた。

初めてそのシーンを説明してもらった時、私はパニックになった。
なぜなら、そのシーンを、本来のストーリーに基づいたセリフを使って表すからだ。

本来のストーリーでもそこの部分は調査官について語っているので、そういう意味ではやりやすいのだが、やはり合わないセリフは歴然とそこにある。それを無理なく使うためには、

調査官だった恵美ちゃんが、アルヴァになったり、
テネシーだった高杉さんが、ウィリーになったり、

するのである。
何の前触れもなく。

その「役が重なり合っている」ということを、お客さんに伝える努力を放棄し、イメージだけで「整理した気分」になり、乗り越えようとすると、破綻するのはわかっていて、

でもどうしてもイメージだけで進むしかないシーンもあって(なんせセリフが変えられないので)

この「だまし絵を劇化する」という作業の難しさを改めて痛感した。

それでも何とか5ページを終え、6月最後の稽古になるこの週末で、最後の6、7ページを仕上げることを決意して、私たちは別れた。

財産没収稽古2017.06.17

4ページの、ダンスのシーンが保留になっていたので、そこをまず暫定でも作ってから次に進むことになった。

まっちゃんとトルソー
高杉さんと恵美ちゃん

どうやって入れ替わるかという問題にぶつかる。部屋の真ん中には、調査官によって仕切られた赤い線がある。この線を越えること、超え方などの問題。ここでは、この線を一旦外して踊るということに決まる。そろそろ、この線が何なのか、何色で、どういう風に貼られているのか、を考える必要性。

そして、ダンスのシーンをとりあえずシンプルに作り上げ、先に進むことにした。

この日には「まっちゃんが高杉さんを襲い、抵抗するので瓶で殴って犯す」としていたシーンを、やはり初演と同じに戻そうという話になった。まず、「犯される」というシーンを作る困難さと、そこまでして犯した人と犯された人がそのあとどういうモチベーションでそこにいるのかという難しさが相まって、だ。

財産没収稽古2017.06.14

まず最初に、ここまで作ったシーンの通し。
その通しで、「恵美ちゃんの座るタイミング」を再考し、高杉さんがトルソーを立てると恵美ちゃんも座る、というふうに決める。

次に、「この財産を没収す」というセリフを、3人ではなく、高杉さんと恵美ちゃんでいうことにする。この時の二人は、テネシーとその姉、という関係だ。二人でこのセリフを発することで、いよいよこのヘンテコな世界がスタートする、というイメージ。

これまでテネシーに対して、妄想を嘲笑っていた恋人のまっちゃんも、この辺りから、テネシーの劇世界を共有しようと歩み寄ってくる。しかし、そういうことにするためには、一旦自分の欲望を満たすためにテネシーを殴って襲いかかった、という過去をやや持て余す現実。

ここで高杉さんから、演技する上で、誰の声を聞いて、誰の声を聞かないか、ということの整理を重要さが告げられる。確かに。私は勝手に、解釈しているが、演じる側がそれを明確に持っていると、見た目や舞台上の空気も変わってくる、ということ。

それから、初演では「テネシーのインタビュー」としていたシーンを、改めて作り直した。

ここまで、あくまでテネシーの妄想内に現れていた姉としての恵美ちゃんが、ノンコントロールになってこの場から逃げ出してしまったりする面白さ。あるいはまっちゃんが恵美ちゃんにのしかかり、恵美ちゃんが逃げる、という初演の構図を、逆にしてみるという可能性。色々と脱線したりしながら話し合った。

この日は4ページを主に作った。

財産没収稽古2017.06.13

今日は昨日まで仕上がった1ページ半の通しから。刷新したセリフの割り振りで、ある程度ざっくりと決めた動きを確認します。

通して見て、大きく二つ、改善点。一つは、恵美ちゃんが何のタイミングでダンスをやめて椅子に座るのか、ということ。オープニングそうそう、恵美ちゃんが踊ることにしているのですが、その踊りの終わりで、すぐに椅子に座りたい、と思っていたのです。しかし、踊る場所から椅子の距離は少しあり、さらにダンスが終わっても椅子の上には高杉氏がしばらくおります。空白の時間ができてしまうのですが、一旦はけるということになると、再び登場するタイミングや意味もまた見つけなくてはならず・・・

暫定で、踊り終わったら、そこに倒れ、高杉さんに起こされて椅子に座る、という動きをつけました。

そして、まっちゃんが高杉さんをおそう問題。
おそうとは言ったものの、最初から暴力的に行くわけではなく、最初は徐々に、恋人らしく、キスをしようとしたり、何なら自分の方を向いてほしいと顔に手をあてたりするようなところから、体を押し倒して瓶で頭を殴るところまで、を少し具体的に決めて行きました。

椿姫のオペラの音楽を流してやってみたのですが、それで即興的に踊ってもらうと、意外とダンスのようでもあったので、少し具体的な動きというよりはダンスに寄せてみます。

休憩後は、まだ手をつけていないところの、セリフの割り振りから。

ここでとてもとても大きな問題にぶち当たります。劇中で「私たち、あの大きな黄色い家で、普通の暮らしをしていたのよ」というセリフが出てくるのです。これのどこが問題かというと、

すなわち、ここがどこなのか、を定義してしまうセリフなのです。

本来の戯曲では、ここは「線路の上」、外です。そしてこの線路の上から、遠くに、ウィリーの住んでいた、差し押さえにあった黄色い家が見えています。それをさして「あの」と言っているわけです。

しかし私たちは、今演者たちのいる場所を「差し押さえられた家」としています。誰の家かわからないが、行政に差し押さえられた家に、フラッと酔っ払ったテネシーが入り込み、そこで劇を創作する、という設定なのです。

であるにもかかわらず「あの」と遠くをさして、差し押さえられた黄色い家の話をするのは、かなり、無理が出てきます。ちなみにこの部分、初演でどうしていたかというと、「大きな声で叫ぶ」ことで、ごまかしていました。

ということを思い出し、4人で大笑いであります。
黄色い家問題は2年前もおそらく、はっきりあったのです。
しかしそれを、声の強弱で、切り抜けようとしたのでした。

いや、正直言うと、比較的全てのシーンをそんな感じで、感覚的に、声の強弱やリズムなどで構成してました。それがとても効果的に見える部分もあったし、もう少し練った方が良かったと思うところも、今回の稽古でたくさん見つかります。

パニックだ、と言いながら、パニックという英語の発音をネットで調べたりしながら(⬅︎現実逃避)、いろいろ話し合うこと数十分。ふと、普通ならこのセリフって、ここまでのセリフのやり取りに呼応していないよな、と気がつきます。

アルヴァ今、お墓の中なの、とウィリーが言うと、大変だね、とトムが返事します。しかしウィリーは、何よ、半分もわかってないくせに、と毒づき、上記のセリフを発するのです。

普通なら「何よ、半分もわかっちゃいないくせに!私、あの黄色い家で、アルヴァの最期を看取ったのよ!」とか言うはずです。なのに、あの家で「普通の暮らしをしていた」ということを主張するわけです。

この齟齬を指摘したところ、高杉さんが、「それや!」と言いました。つまり、ウィリーは、姉のアルヴァの綺麗なところばかり言っているけれど、アルヴァからすれば、それはいいところばかりの説明に聞こえる。私は、普通に、暮らしていた。トイレも行くし、お腹も空く。というような主張にしてみてはどうかとなったのです。

そうすれば、このセリフは、姉のアルヴァからウィリーへのセリフとしておさまり、この後の思い出話にスムーズに移行できることがわかりました。

その続きは、割とスムーズに割り振りが進みました。「この財産を没収す」と、この場所にかけられた札を見ていえば、ここが差し押さえにあった場所であることがわかる。

とにかく、この人は誰なのか。
ここはどこなのか。
どういう設定なのか、ということを明示できるところまで、進みました。

財産没収稽古2017.0611

恵美ちゃんが百均で買ってきてくれたテープで、舞台作りからスタートです。

今日は稽古開始から、セリフの割り振りを確認しました。
前回8割がた決めたのですが、まだ曖昧にしていたところがありました。
それを精査すべく、頭からセリフを読んでいきます。

途中で、少年少女が、自己紹介をするくだり。
立ち止まります。
自己紹介をするということはつまり、この人が誰であるかを劇の中で定義するということ。

そこをクリアするために、改めて、今回の三人の演者は誰なのか、をはっきり決める必要に迫られます。

初演では、

高杉さん→テネシー・ウィリアムズ、ウィリー
まっちゃん→テネシーの恋人、トム
恵美ちゃん→ウィリー、アルヴァ、不動産を差し押さえる州の行政官

という割り振りでやりました。これ、2年前はとても良いわけ方だと思っていたのですが、今回改めてそれぞれの役所と共通点などを吟味してみると、アラがいっぱい!それで、以下のように更新しました。

高杉さん→テネシー・ウィリアムズ、トム、ウィリー
まっちゃん→テネシーの恋人(=腐ったバナナ)
恵美ちゃん→姉、アルヴァ(=ボロ人形)、不動産をさしおさえる州の行政官

トム、というのはテネシーの事で、ウィリー、というのは、ウィリアムズの事。
つまりこの「財産没収」という戯曲は、まさに、テネシー・ウィリアムズの内面の対話、という風に解釈できるのですが、そうだとした場合に、初演の時の割り振りには齟齬がありました。

しかし改めて割り振りを決めたことで、かなりスッキリします。

これに従い、自己紹介も、高杉さんのアイディアですが、テネシーが「トム」と恋人に呼ばれながら、自らのことを「ウィリー」と名乗る、ということにすると、とても見やすくなりました。(初演では、テネシーが恋人を「トム」と呼び止め、なおかつ、自分のことを「ウィリー」と自己紹介していたのです)

この後、トムとウィリーが、お互いに「どうして学校に行かないの?」と聴きあうシーンが出てくるのですが、両方高杉氏が担う以上、この質問に高杉氏が2回答えることになります。しかし、連続で答えると意味がわかりません。

そもそも、初演でもこの2回の質問の合間に、テネシーが恋人に無理やり犯されそうになる、というシーンを挿入していましたので、これを引き続き採用することによって、2回連続の質問のおかしさを回避し、さらに意味を持たせることができそうです。

さて、このシーン、恋人がテネシーを襲うシーン。初演では、恵美ちゃんが「姉」として登場して、転がっていたお酒の瓶で恋人役のまっちゃんを殴り、かろうじて未遂に終わらせる、という風にしていたのですが、

逆に、犯されまいと逃げるテネシーを、恋人が瓶で殴り、犯してしまう、という風に踏み込んでみることにしました。その提案をしてみると、実際に、それが最も有用な解に思えてきます。

前回、恋人の強姦を未遂に終わらせたのは、どこかに、そういうものを見たくない、という私の極私的な感覚が反映されていたのかもと思いました。しかしテネシー・ウィリアムを扱う以上、私が見たいか見たくないか、ということはほとんど関係がなく、どちらが彼の劇世界にとって有用かということが重要になってきます。

どうも、悪童日記を経て、そのあたり、収まりの良い答えに安住せずあえて嫌なところに踏み込んでいくことで核心に迫ることができたりする、という経験が生き始めたようです。

ただ、実際にそれをやるとなると、とてもとても難しいお題です。
決して、生々しいものを見せたいわけではありません。
解釈はそうだけれども、そうだということが伝わるなら別の方法で見せたい。
ここは時間がかかりそうなので、とりあえず、暫定の動きを決めます。

恵美ちゃんやまっちゃんに、あえて、全然違う動きを提案してもらいます。
なかなかに難しい道のりです。

そして休憩。

男性陣がタバコに行った間、私と恵美ちゃんで、おにぎりを食べながら、恵美ちゃんが誰なのか、という話をします。

というのも、姉という役割だけなら筋が通っているのですが、彼女は、この家を差し押さえる行政官の役割も果たしているのです。この行政官、本来はウィリーのセリフの中に出てくるだけの存在。

一瞬、恵美ちゃんが姉だけをやった方が混乱がなくて良いように感じます。
でも、彼女が行政官をやることで、とても効果的な芝居に仕上がっているのも確か。

少し考え、彼女が不動産を差し押さえる州の行政官であるということ、それが、はっきりと観客に明確に伝われば、そのあと、彼女が「姉」におさまっても、「両方兼ねている」という解釈をすることができるのでアリだろう、という結論に至ります。

初演では、彼女の行政官としてのアクション、具体的には、この家にテープを張り巡らせて、ここを差し押さえる、というアクションの、リアリティについて、あまり議論し尽くしてなかったように思います。本来、家を差し押さえる時は、家の中にテープをバッテンに貼ったりしないからです。

でもそれは、抽象的な意味で、そうしているのであればオッケーです。
改めて、テープの色、それが抽象的なアクションであること、どのように貼るか、などを相談し、それに応じて、美術のことも少し相談しました。

そして、中央奥に扉を仮に置くことにしました。

実際に、奥に扉、斜めに一本、高さをとってテープを貼り、その状態で2ページ、通しました。

高杉氏と話す中で、「コンセプト」と「物語を起動させるための仕掛け」の違いを、体感としてつかめるようになってきました。これが、すごく、すごく面白いです。こう言う脳内の感覚を言葉で定義していくトレーニング、40歳にして遅いかもしれないけど、させてもらえて、感謝しかありません。

終わりに、詩恵ちゃんとスクが来て、気持ちがふわっと緩みました。

財産没収稽古2017.6.7

今日は雨。
昼から集まって、稽古が始まります。

前提として、とりあえず6月中は基本的に、初演そのままを再度立ち上げてみる。ということにしました。約2年ぶりに見た映像は、やはりとても見ごたえのある作品でありながら、アラも見えます。

しかしそのアラを解消するために、筋を一つ一つ懇切丁寧に通していこうとすると、稽古が全く前に進まないだけでなく、よかった部分まで削ってしまう事態に先日なりかけたからです。

一から作品を創るのではなく、今回はあくまで再演であるため、ブラッシュアップになるよう心がけること。また、ストーリーを知らないお客さんにも楽しんでもらう、ということが一つの課題なので、そのことからも筋にこだわらないこと。セリフを一語一句変えずに登場人物や設定を深めて上演するわけなので、どうしても筋が通らない部分が出てくる。それを無理に整理しようとしないこと、を念頭におきました。

初演では全部で37分だったこの作品。
14分のところで、一旦止めます。
出演者たち、自宅で動画を見て、セリフや動きを確認してきてくれていたので、ほぼ問題なく通りました。さて、微調整開始です。

演出担当の私には、「テネシーを演じる高杉さんが椅子に向かって話しかける」部分がとても唐突に感じました。初演でも確かに、多少唐突感はあると思っていたものの、なんとか押し切った部分です。その部分の違和感を解消するために、オープニングで、松尾恵美ちゃんに椅子に座ってもらうことを提案します。最初に人が椅子に座っていて、その人にテネシーが触れようとした、という前置きがあれば、その後、彼が椅子に向かって話しかけることの違和感が減るように思えたからです。

松尾恵美ちゃんは、自分が演じている側からの違和感とともに、2年ぶりに見た動画の違和感として、オープニングで彼女が演じる「不動産を差し押さえる女」と「テネシーウィリアムズ」の二人は、目があう必要はないのでは、と提案してくれました。女はテネシーと同次元にいなくても良いのではないか。つまり、お互いに存在に気がついていなくても良いのではないか、ということ。なぜなら、2回目に女が登場する時は、女にはテネシーが見えていない、のです。

1回目は見えていて、2回目が見えない理由は何か。
同じ次元にいないのではないか。

確かに・・!と思いながら、にわかには解決法が見つからない。というか、そうでなければならない理由がない。次元をずらす理由は何か。。。恵美ちゃんの感覚はとても信頼できるので、そこにヒントが確かにあると感じます。

というわけで、私の提案と、恵美ちゃんの提案を、高杉さんの提案で実際にやってみることに。

不思議なもので、立ち上げてみると思った以上にその意味がわかります。

オープニングで、恵美ちゃんが椅子に座っており、時計を気にしている。
そこに高杉さんがやってきて、その恵美ちゃんに触れようとするが、恵美ちゃんはちょっとの差で立ち上がり、その場所を差し押さえて出て行ってしまう。椅子から立ち上がった「不動産を差し押さえる女」としての恵美ちゃんのことは、もはや高杉さんには見えません。

高杉さんは、薄暗いこの部屋で、今ふと見えてしまった妄想(椅子に座った女)を頼りに、戯曲の執筆を始める。

がちゃんと音がし、振り返るとそこには恋人役のまっちゃんがいる。

見ていてとても面白く興奮しました。
なんというか、意味のわかる、面白さです。
椅子に座っていた女はおそらく、テネシーの姉なのです。
そのことはここではまだわからないのですが、少なくともテネシーにとって意味のある人なのだということはわかると思います。そして後々セリフで、これが「姉」であることは、わかるようになっているのです。

また、不動産を差し押さえる女が、今このテネシーのいる時間にはここにおらず、どうやら違う時間軸にいるらしい、でもいったいなぜ?という疑問も、後ほど解消される戯曲になっています。

追っかけてきた恋人は、私たちの独自の設定では酔っ払って戯曲を書いているテネシーをここから連れ出そうとしますが、テネシーはなかなか、妄想から戻ってこない、ということになっています。初演でもともとやっていたこの部分が、オープニングを変えたことでとても生きてきました。

しかし、その後すぐ「この素敵な人形」問題が浮上します。「この素敵な人形」問題というのは、この戯曲の登場人物であるウィリーが、手にしているボロ人形のことを「この素敵な人形」というのですが、それが、私たちが現在設定している状況に全くそぐわないという問題です。

初演では、松尾恵美ちゃんが再び登場して、高杉さんの鞄からワンピースを取り出しながら発語する、という方法を取っていました。照明の色を変え、その時間は今流れている時間とは別である、というような印象をつけました。

「今は訳がわからないけれどそのうちこのタネが明かされるのかしら」というような印象のシーンになっていたのです。問題は、その後そのシーンが解説されない、ということにありました。

私が思いつきで、逃げの提案をします。
どでかい音楽をかけ照明を一気に変えて、「素敵な人形」という言葉を映像や幕で出す、というようなものです。ただし逃げであることは確かなので、採用しづらいと思っていたところ、

高杉さんが、ボロボロの服を着せたトルソーを舞台上に置いておき、それを見ながらまっちゃんがつぶやくというセリフにしてはどうか、と提案してくれます。

トルソーを置く。
勇気のいる選択です。
なるべくシンプルに、必要最低限の美術で、出来る限り大きく膨張力のある演出をつけることをサファリのモットーとしている以上、少し意味のある、美術を置くかどうかは、なかなかの決断です。

ただ、トルソーはさておき、まっちゃんがトルソーに話しかけるということを込みで外連味のあるシーンにすれば、逃げにならず、オープニングからワクワクしてもらえるかも、と希望の光が差し込みました。斜め、対の場所に同じドレスなのだが綺麗なものを着た恵美ちゃんが出てきて、まっちゃんと恵美ちゃんがそれぞれ踊る。

すると恵美ちゃんから、この後にやる「足のダンス」と構図もコンセプトも似ているので、同じシーンにしても良いかも、と提案してくれます。

まっちゃんは、こんなダンスはどうだろう、とあやつり人形のとても怖い動画を見せてくれました。

お二人には、一旦私からのイメージを提案し、作ってきてもらうことにしました。作って、共有して、意見し合い、また作り、を繰り返す予定です。

その後、高杉さんの提案で、セリフをこれまでと違う割り振りにしてみます。

「学校に行かないの?」と、少年少女がお互いに聴きあうシーンがこの後やってくるのですが、私たちは新たに、テネシーが恋人に「どうして学校へ行かないの」と聞き、ウィリーが登場するので今度はテネシーがウィリーに「君はどうして学校へ行かないんだい」と聞くというシーンに作り変えていました

それを、二回目の学校の話題の部分、つまりテネシーがウィリーに効く部分を、アルヴァがテネシーに聞く、ということにしてみたのです。

アルヴァとは、ウィリーの姉。ウィリーは女の子だが男の名前。つまり、アルヴァはテネシーウィリアムズの姉、ローズの象徴です。

男のセリフは恵美ちゃんは読まない、という固定概念を壊してみることで、意外な広がりが出てきます。なるほど、この椅子に座るのは、どうやら、テネシーの姉らしい、ということ。

その後、処理にとても困るセリフが次々に出てきたのですが、同じことをするのでも、そのセリフ群の最初に道筋をつけてあげると、とても見やすくなることがわかりました。

ここまでで、あっという間に4時間が経ちました。
6月の稽古はあと11回。
なんとか、6月中にざっくりとした形を作り上げ、7月から深めていこうと考えています。

読んでくださった奇特な皆様、8月中旬までお付き合いのほど、よろしくお願いもうし上げます。じうネタも時々挟みたいとおもいます。

財産没収稽古2017.5.21

この日の稽古では、誰がどの役を貫くか、というプランをまず演者たちに提示し、そのルールで頭から作っていく作業となりました。

とはいえ、そのルールに則ると、すべてを変更してしまいたくなる状況に。
初演のままで十分に面白いものを変えるのは、なかなか、合理的ではないように思います。
そのジレンマで前にあまり進まず終了。

整理することを目的と思っていましたが、し切る必要はないのかも。
でも、だとすると、どこをどのように改善していくべきか。準備がまだまだ必要です。

この日は同じ時間に別の場所で、すくの母とじうの父が稽古をしておりましたので、本番の近い二人の現場を優先し、すくとじうはこちらの稽古場に来ました。