Performance Record 2

財産没収

ハヤカワ演劇文庫6「しらみとり夫人・財産没収ほか」より
作:テネシー・ウィリアムズ 翻訳:倉橋健

テネシーの短編を大胆にアレンジ。

セリフは一語一句変更せず、だまし絵的に全く別のドラマを立ち上げた。

浮かび上がるのはテネシー自身の苦悩と歓喜。

 

作品概要

利賀演劇人コンクール2015で優秀演出家賞一席を受賞した作品。

ブラッシュアップして二年後に京都で再演し、レパートリーとなる。

短編戯曲だが、そこには作者テネシー・ウィリアムズの人生やその後の戯曲の要素が凝縮されている。本来は線路脇で話す男の子と女の子の二人芝居。しかし「財産没収」を執筆しているテネシー自身を登場人物に設定し、戯曲には登場しない彼の恋人や姉、郡の調査官らと出会うことで彼が戯曲に込めたものをより濃密に抽出することを試みた作品。

 なお上演許可証に記載のある通り、セリフは一語一句変更していない。

 

 

 

演出メモ

劇中で、トムはウィリーの妄想を聞きながら、雲のように不安定な彼女の心をただ眺め、それが去っていくのを見つめているばかりだ。

 だがここにはテネシー・ウィリアムズの人生と戯曲の多くが凝縮されている。私たちはこれを少年と少女の会話にとどめず、戯曲を上演後なんども書き直したというテネシー自身を登場させることで、彼の人間への眼差しを舞台化したいと考えた。性・家族・愛憎・芸術・貧困・自我といったものだ。

 酔っ払ったテネシーがふらっと立ち寄った空き家。彼はそこで、姉の亡霊を見る。そこからインスピレーションを得て、本来の登場人物であるトムとウィリーのセリフをつぶやき始める。劇世界を立ち上げていく過程で、そこには本来登場しない、ウィリーの姉アルヴァ、ウィリーの家を査定しに来た郡の調査官の女、そしてテネシーの実際の姉や恋人などが現れ、彼にのしかかる家族への思いがあらわになっていく。

 セリフを一語一句変えず、戯曲に書かれたものとは全く違うドラマを立ち上げた。

 

公演履歴

作 テネシー・ウィリアムズ
翻訳 倉橋健
演出 山口茜


日程・会場 利賀演劇人コンクール2015参加

2015年7月29日利賀山房

<出演>
高杉征司
松本成弘
松尾恵美
<スタッフ>
舞台監督:下野優希
照明:池辺茜
音響:森永キョロ
衣装:南野詩恵
主催 文化庁、公益財団法人 舞台芸術財団演劇人会議
共催 富山県、公益財団法人 富山県文化振興財団
後援 南砺市
文化庁委託事業「平成27年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」

 


 

日程・会場 2017年7月17日〜20日 アトリエ劇研

<出演>
高杉征司
松本成弘
松尾恵美
<スタッフ>
舞台監督:浜村修司
舞台美術:夏目雅也
照明:池辺茜
音響:森永キョロ
衣装・メイク:南野詩恵
舞台監督助手:下野優希
宣伝美術・写真:堀川高志(kutowans studio)
制作:トリコ・A
票券:梶川貴弘
協力:井内純一郎、朴建雄、シバイエンジン
助成 公益財団法人セゾン文化財団
芸術文化振興基金
共催 アトリエ劇研
企画・製作 トリコ・Aプロデュース


 

 

 

2018年12月7日〜23日 松山・沖縄・東京にて公演予定


劇評

利賀演劇人コンクール受賞時の審査員による講評

SCOT サマー・シーズン 2015 全発言記録集 利賀から世界へ vol.7 より一部抜粋

小澤英実氏ー批評家・翻訳家・東京学芸大学准教授

「私にとってこの戯曲を正しく読んだ上で効果的な演出ができていると思えたのは山口茜演出「財産没収」だけでした。山口作品は、戯曲に対する深い理解と敬意に支えられた才気煥発な演出によって、利賀山房に夢幻の箱庭的空間を創り出す事に成功していたと思います」

深田晃司氏ー映画監督

「今回のコンクールでは最も大胆に戯曲を再解釈した挑戦的な作品だと感じた。テキストへの批評意識が最も顕著に現れていた。テネシー・ウィリアムズという作家のプライベートを基に戯曲にない登場人物を増やし、しかし台詞は戯曲のままで、俳優達の身体の状態から別の意味を引き出して行く。高度なだまし絵を見せられているかのようだった」

平田オリザ氏ー舞台芸術財団演劇人会議理事長・青年団主宰・こまばアゴラ劇場芸術監督・

         劇作家・演出家

「山口氏は、他の参加者に比べて格段に演出がきめ細かく、完成度の高い作品であった。一方で、俳優間の演技のばらつきが大きく、意図的に俳優ではなくダンサーを起用した点も、説明を聞いた上でも説得力に欠ける構成だったと感じた」

@2017stampLLC.