財産没収稽古2017.07.30

さて、7ページから。

「それが今じゃ、全くの空き家」という言葉で、この空間から人がいなくなる。という視覚的な面白さを、どうしても取りたい。そしてそこから一気にラストに流れ込んでいきたい。ところがその思惑を思いっきり遮る「一見どうでもいい会話」をどう取り扱うか。

その前に、その「空き家のセリフをもう一度吟味してみると・・・

「姉さんがその人たちと寝たりするから」

「寝たの?」

「だって「看板娘」だったんだもの。それが今じゃ、全くの空き家」

と言っています。なるほど、「空き家」というのはその家のことを指しながら、その実、姉のことを指しているのです。もう誰も来なくなった場所。男たちが寄り付かなくなった姉。

というわけでこのセリフの前に、えみちゃんに部屋の中に一歩入ってもらい、えみちゃんごと「空き家」と言ってみます。そしてこれまで、「その調査官が来た時に隠れていた」という動作を、えみちゃんにやってもらいました。つまり、調査官としてこの部屋に入り、服を脱いで、この家の住人になり、隠れるという動作をしたのです。

「隠れた」のは実はウィリーなのですが、姉が隠れることにより、ウィリーは自身を姉と同化したがっていたことが「だまし絵」的に描けます。

さらにそこから、「一見どうでもいい会話」に見えていたところで、これまで歴然とあった「境界線」をテネシーとその恋人がすっと超えます。そして、初めて、しっかりと、姉と会話をするのです。

これまで、とても苦しんでいたこの箇所が、初めて、すっきりと通りました。

そこからは一気にウィリーの妄想が激しくなっていって、ラストはこれまで通りでよしとし、通しをしてこの日の稽古を終えました。