財産没収稽古2017.06.23

この日は実に2時間のみの稽古。
前回の稽古が、じうのお熱で早退ということになったので、私抜きで3人が進めてくれたシーンについて、説明を受け、実際にやってみてもらった。

全部でA47ページあるこの戯曲。
現在、5ページ目を検討中だが、ここまでの流れを説明すると、

テネシーウィリアムズが、ふと、空き家に入る。酒瓶片手に、一室に侵入すると、そこには姉さんが座っている。テネシーは驚き、姉さんに触れようとすると、ふと消えてしまう。

テネシーはこの空き家の雰囲気と姉さんの幻影から、インスピレーションを得て、戯曲を書き始める。そこへ恋人が追いかけてくる。恋人は、テネシーを連れて帰りたいのだが、テネシーは戯曲を書くのに必死だ。時折セリフを口走りながら、妄想を文字で捉えようとしている。恋人はテネシーを襲い、テネシーは恋人を瓶で殴って気絶させる。

テネシーの紡ぎだす劇世界は、部屋に転がっていたトルソーや恋人をも利用してどんどん広がっていく。ふとテネシーは、幻影の姉をもう一度「見る」。テネシーはいよいよ劇世界へ没入する。

という感じまで進んでいる。

で、今日。

恵美ちゃんは、不動産を差し押さえに来た州の調査官。オープニングで高杉さんが見た「姉さんの幻影」は、実はこの調査官で、彼女はテネシーとは違う時間軸で、その家を差し押さえに来ている。時間軸が違うので、テネシーにとって彼女は幻影だし、彼女からしても、テネシーには一切気がついていない、という状況。

という前置きを経て、
高杉さんたちは、私が休んだ間に、

*物音に気がついて、恋人と息をひそめる。

*調査官がやってきたようだ。

*鑑定士が懐中電灯で辺りを照らしながら家の中を歩いている、テネシーたちは、彼女に気付かれぬようこそこそとしゃべる

というシーンをこの5ページを使って、作ってくれていた。

初めてそのシーンを説明してもらった時、私はパニックになった。
なぜなら、そのシーンを、本来のストーリーに基づいたセリフを使って表すからだ。

本来のストーリーでもそこの部分は調査官について語っているので、そういう意味ではやりやすいのだが、やはり合わないセリフは歴然とそこにある。それを無理なく使うためには、

調査官だった恵美ちゃんが、アルヴァになったり、
テネシーだった高杉さんが、ウィリーになったり、

するのである。
何の前触れもなく。

その「役が重なり合っている」ということを、お客さんに伝える努力を放棄し、イメージだけで「整理した気分」になり、乗り越えようとすると、破綻するのはわかっていて、

でもどうしてもイメージだけで進むしかないシーンもあって(なんせセリフが変えられないので)

この「だまし絵を劇化する」という作業の難しさを改めて痛感した。

それでも何とか5ページを終え、6月最後の稽古になるこの週末で、最後の6、7ページを仕上げることを決意して、私たちは別れた。