月別アーカイブ: 2017年7月

財産没収稽古2017.07.29

さて、通しの後、話し合いを重ねて、それから初めての稽古です。

前回の稽古で、トルソーと恵美ちゃんを同一の存在とした場合に舞台に共存できないのではないか、という問題を解決するために、高杉さんと恵美ちゃんがいる時間は別で空間だけが同じであるということにしよう、となりました。しかし、「いない」ということにしてしまうと、目線の問題が大きくそれを阻みます。

本日、改めて、高杉氏と松本氏は恋人同士、同じ時空にいる。恵美ちゃんは姉として、過去のこの家にいる。恵美ちゃんは他の二人を、自分の時空にいる兄や恋人としてみているが、高杉氏や松本氏にとっては調査官であったり、亡霊である。という風に整理することになりました。

そして、恵美ちゃんには「そと」をぐるぐるとランタンを持って歩いてもらうことになりました。

帽子とコートを着用しているので、高杉氏たちからすればそれは調査官なのですが、恵美ちゃん本人としては「おでかけの格好」です。周りを、ゆっくりと歩く恵美ちゃんは、精神的に参っている姉そのものです。

そして恵美ちゃんが以前提案してくれた「板つき」スタートで行こう、と高杉氏が提案します。この場所が、空き家かどうか、どうしても分からせる必要はない、ということです。むしろわからせようと努力することが、建設的でない上に、効果的でない、と私も感じます。

また、客入れ中に恵美ちゃんが踊るという高杉氏の提案を採用します。高杉氏が「キンソンが始まったら踊り出してはどうか」といい、恵美ちゃんと松本氏がハテナ顔に。「キンソン」というのは学生劇団用語なのでしょうか。私も使ったことはほとんどないのですが、本番が始まる直前の客入れ曲のことです。ダンサーたちは全く知らなかったようで、しばらくその「キンソン」で盛り上がりました。平和です。

 

そして、恵美ちゃんと松本氏が出会うシーンを、「松本氏が怖がる」という風にすることで、エッジを立たせることにしました。二人はずっと舞台上にいるため、初めて目を合わせたとしても、初めて出会った感を出せません。ずっと見えていなかったものが急に見えたことを伝えるために、怖がってもらうと、とても良かった。松さんは普段から割とお化けが苦手なので板についていました。

そしてそこから、フォーカスする人物を、高杉氏から松本氏に変更してみようと提案します。高杉氏がいいね!と言ってくれます。「視点が変わるといいね」ということはこの稽古場で度々話してきたのですが、こういう形で実現しそうです。

つまり主役を途中で変えるということです。さて、功を奏すかどうか。

7ページまでこのルールでかなりスッキリと筋を通すことができました。しかし、7ページ目にして、停滞。ここを「空き家」である、と明言する箇所あたりから、なんともならないことがわかりました。一見、無駄話が多いこの戯曲。しかしこの「無駄」だと思っているものが、意外とものすごく考え抜かれたものであった、という経験をテネシーの戯曲で度々している私たちは、腰を据えて考えたほうが良いと判断し、明日の稽古に持ち越すことにしました。

テネシー・ウィリアムズ。時代の洗礼を受けて残ってきただけの人です。本当に、やればやるほどこの戯曲を好きになってゆきます。

さて、毎日毎日、どんどん、面白く、筋が通っていきます。毎回の稽古が、とても刺激的で面白いです。全員がアイディアを余すところなく出し合っています。下野くんも、毎日クーラーやら扇風機やら、この部屋を涼しくするためにたくさん考えてくれます。なんというか、つかの間のものだからこそかもしれませんが、無駄のない稽古場です。

というわけであえて、無駄に挑戦。恒例のストレッチ教室。

2年前はブリッジを理想の形に近づけるという努力をしましたが、今回は恵美ちゃんの体と同じ状態になるべく、不肖山口毎日ストレッチを重ねております。この姿を見て、高杉氏が「野菜と肉ぐらい違う」と言い放ちました。「フェラーリと軽トラ」とも。悔しいです。

 

 

 

財産没収稽古2017.07.26

さて、通し後の稽古。山口から、違う時間にいる人が同時に同じ場所に存在するという処理をしたいという提案をします。

以前、高杉氏が熱く語っていた「科学的にはタイムトリップやテレポーテーションが可能である」という話。これを私が思い出し、今、テネシーが生きている時間と、軍の調査官がこの場所を見に来た時間の間には40年の差があることにしてはどうか。つまり最初から最後まで、高杉さんとえみちゃんは出会っていないことにしてはどうか。

どうしてもテネシーの「感情」や「エゴ」にフォーカスしてしまいがちなこの作業。そういうものから離れて、もう少し普遍的なところで見れないか、と思ったのです。

この提案が、意外と行けるかもということで、どう成立するか、組み合わせを考えたり立ったりしてみました。

高杉さんとまっちゃんが恋人、同時代、えみちゃんが不動産の調査官、別時代

えみちゃんとまっちゃんが恋人、同時代、高杉さんがテネシーとしてひとりきり、別時代

しかし元々別の物語を紡いだテキストをもとにする以上、どうしても筋を通すことはできません。思いつきは良いものの、演者に落とすとかなり難しい作業であることもわかりました。

科学的な根拠からくる処理をしようとしても、筋を通し切ることができない以上、どこかで演劇的な力を借りるしかないのではないか、と高杉氏。

面白く難しい稽古です。

財産没収稽古2017.07.24

この日は通しをスタッフさんが見にくる日。(通しとは、頭から最後まで止めずにやってみること)

最初の2時間で、日曜までの積み残しをクリアしてゆきます。最初に踊るシーン、えみちゃんに、体の動きに連動した発語をしてもらう。高杉さんの「腐ったバナナ」というセリフを、瓶を見て言わずにまっちゃんを見て言ってもらう。高杉さんが「私の姉さんだけど」と言ったらまっちゃんが高杉さんを見る、1回目に「誰かが来た」と息をひそめるシーンは、まっちゃんはしゃがまない。

などなど、基本的には動きを変える作業です。

それから、唐突に感じたセリフのシーンは、その前にえみちゃんが他の二人に気がつくタイミングを変えることで唐突感を減らす、などの工夫をしました。

通し稽古を終え、スタッフとミーティングをします。スタッフとは美術のことを中心に話し合いを進めます。結局、私に絵が見えていないことに、問題のすべては集約されてゆきます。

スタッフが帰った後、さらにキャストだけで話し合います。4人の提案がこの作品をよくすることに終始されるものばかりで、余計な気遣いなどなく意見をぶつけ合えて、終わった後の幸せ感がハンパなかったです(山口茜主観調べ)

できることとできないこと、リアルなことリアルじゃないこと、メタファーと制約、お客さんには何がどこまで伝わるか、ということ。

最終的に、「今はえみちゃんとトルソーは同一としているが、えみちゃんとトルソーが共存することをどう解釈するか」という問題と「この場所が空き家であることの証明」という問題をどう解決するかというところまで話し合って、この日は終了しました。

財産没収稽古2017.7.22

ああ、やってしまいました。

この土は、7ページの後半から8ページの前半までを作ったのですが・・・この土日は息子と一緒の稽古場だったため、もう、弁当つくって息子の準備をして、稽古に行って息子の相手をしながら稽古を見、それからご飯を食べさせ、とやっていて、帰宅したらぐったり。稽古の内容が、わからなくなってしまいました・・・。

このシーンは、ここまで妄想を展開してきたテネシーと、それを聞かされ続けてきた恋人が、「調査官の来訪」によって身を潜めるところから、いよいよ恋人がテネシーの劇世界へ突入する、というシーンです。

その先が、どうしても、思い出せない。すみません。代わりに、稽古終わりでみんなで見た花火の写真を早急にアップします。

 

財産没収稽古2017.07.19

この日は、6ページを作る日でしたが、まずは5ページまで2回、通しをしました。そこで、「恋人には調査官が見えていないこと」がわかりづらい。「素敵な人形」というセリフが唐突に聞こえる。「でもシドニーは別よ」が意味するもの。「純金のネックレス」をてばなさなかった理由は何か。「誰?」と発語の仕方。などについて話し合いながら改善してゆきます。

その後、6ページを作りました。元々の案があったので、セリフの割り振りを変えるときもその解釈に従えばよく、スムーズに完成します。家の事情を姉妹で語ること、そして、恋人がここからいよいよ、劇世界に引きずり込まれていくこと。

さらに、「誰かが来た」と息をひそめるシーンについて、リアクションを考えます。この前に恵美ちゃんはアルヴァから調査官へと戻るのですが、前回作った時はそのタイミングで、3人がこの部屋から外側に出る、としていました。外側というのは、この家の外周のことです。

ここで、美術ミーティングに。外周があるかどうかを含めて、話し合います。夏目さん曰く、今作っている作品が、どこまで具象性にこだわっていて、どこから手放しているのかがわからない、とのこと。最初に言われた時はすっと意味がわからなかったので、夏目さんにいろいろと聞きだして、少しずつ、理解していきます。こうやって稽古に通ってくださって、意見をもらえるのはとてもありがたいことです。

夏目さんと話しているうち、自分の中に、大きなブレがあることに気がつきます。場当たり的に演出をつけることの限界というのでしょうか。大きなコンセプトは共有しているものの、細部をどう取り扱うかについてはやはり、演者たちは私に一任してくれているわけで、そこに私の手つきが出てしまいます。

夏目さんが帰られた後も、4人でしばらく、美術を中心とした話し合いを続けました。ドアがどこにあるかという問題から派生して、セリフにない部分を説明するための導入の動きについて検討します。いっそ、ドアをなくしてしまってはどうか、ということです。

この話し合いを通して、改めて、私が3人の演者に、どういった演技を求めているのか、を考えさせられました。

財産没収ブレイクタイム

さて、毎日財産没収の稽古が進んでおりますがここで素敵な贈り物が。

一つ目はこちら。artissueという雑誌です。こちらに、第二回公演「悪童日記」の劇評を掲載していただきました!artissueさん、執筆してくださった柴田隆子さん、ありがとうございました!内容はウェブ版でお読みいただけます。

 

 

もう一つはこちら!

稽古場の隣にある畑の方に、お野菜をたくさんいただきました。

もう既に使ってしまったので残っているものをパシャリ。元気になれます。ありがとうございます!稽古場の周囲の皆様、本当に親切で、演劇の練習をしているのです、と伝えると皆さん興味を持ってくださいます。普段、知らない方にこういうことをお伝えしてもあまり興味を持たれることがないので、戸惑っておりますがとても、とても嬉しいです!

ますます稽古、楽しんでまいります!

財産没収稽古2017.7.18

美術のミーティングの後、

5ページにあたる部分を作ります。6月中にまずは形を作る稽古をしたのですが、その時に如何にもこうにも形にならなかったページです。そもそも、このページは「テネシーの独白、創作」シーンとして初演で処理していたのですが、それもこれも、そのページを「抑揚のないもの」と感じていたから。

けれども3ページの段階で、「ずっと理想を語っていた妹、ウィリーに、姉、アルヴァが現実を突きつけることによってテネシーがハッとする」という流れを作ったおかげで、ウィリーは理想を、アルヴァは現実を語るというセリフわけをすることによってエッジを立たせることができるようになりました。

さらに、4ページ最後でテネシーの恋人が、テネシーとセックスするのを諦めて去ろうとしているところを、「沈みかけた船からネズミが逃げ出すみたい」と姉の恋人のことを語ったことで、立ち止まらざるをえなくなっている、としたので、5ページではいよいよ、テネシーの劇世界に入り込んでいく、という変化もつけることができます。

5ページが停滞していたのは、そこまでの流れが作れていたかったからだということがわかります。

また、「ぶつかりっこ」という難題もこのページは抱えていました。幼い女の子が、男の子とじゃれ合おうとするのですが、実際にそれをやるのは高杉さん。これが、何をやっても、よくわからない。成熟した男性が、ウィリーの真似をしているのですが、そのことがお客さんに伝わるとも思えない以上、どうしても本人がそれをやっているように見えます。セリフが曖昧なので、目的が、見えないのです。

そこで、まっちゃんが動きを遮ってセリフを発することで動きをほとんど見せない、ということに落ち着きました。ここは、他の男にもやってたことを俺にもやってくれよ、と言い出す魅力的なシーン。さらに面白いシーンになりました。

財産没収稽古2017.7.17

この日はすくとじうが稽古場に。稽古は昼間に行っているのですが、祝日は保育所が休みのため、どうしても一緒に来ざるをえません。

さて、この日は4ページの稽古です。私がこのシーンで気になっていたことは、母が駆け落ちしていなくなったこと、父が失踪したこと、姉が病死したこと、そしてまだ10歳そこそこの女の子が差し押さえられた家にこっそり住んでいるというこの悲惨さが、セリフからどうも浮かび上がって来ないということ。

このセリフをしっかりと届けるために、セリフの割り振りを考え直します。

また、恋人がなぜ、テネシーが劇作に夢中になり、一緒にいる意味がなくなったとわかった時点でしつこくここに居続けようとするのか、という点を解消するべく、ここで一旦、出て行こうとしてもらうことになりました。出て行こうとするが「沈みかけた船からネズミが逃げ出すみたい」と言われ、立ち止まります。恋人にも、いよいよ、動きや感情に流れが出てきます。

財産没収稽古2017.11.16

この日は、造形大の里井さんと、大学院でテネシー・ウィリアムズを研究していた朴さんが見学に来られました。

3ページを重点的に作ります。

ウィリーとアルヴァがお互いに学校に行かない理由を告白し合っているセリフを、トムとアルヴァ(あるいはローズ)の会話に変更。

また、この前のシーンで、トムを恋人が襲おうとし、それをアルヴァが瓶で殴って止める、という風にしていたのですが、どうもこれがうまくいかなくなってきました。すごく惹かれている相手。恋する相手が殴られているのを、テネシーはどう受け止めれば良いのか、そして姉がそこまで強権的な態度をとるのはなぜか。

本当は、セックスをして仕舞えば良いという話になったのですが、そこはあえて、襲わない、という風に落ち着きました。二人は結局、関係を持たない、という前向きな選択です。

その後ウィリーのお姉さんがいかにモテていたか、という話を必死にするのですが、初演ではテネシーが一人でやっているということにしていたのを、今回は、ウィリーが夢見がちに語っていると、アルヴァが現実的なコトを言う、そしてテネシーがそれにハッとする、という風に変えました。

自分たちだけがわかっているコトは極力排除して行き、わかりやすくしていく。けれども、テネシー・ウィリアムズの世界であることを忘れない。ということで今のところ何とか、成立しています。

終わりに、朴さんが、トークセッションのことについて色々と意見を言ってくれました。

財産没収稽古2017.07.15

13日の稽古は、山口がお休みだったため、出演者3人でやっていただいたことをまず、聞き取ります。お三方は、オープニングにあるトルソーと踊るシーンを作ってくれていました。それを踏まえて、火曜日に話し合ったことを、実際動きに反映させていきます。

二人がセックスをするためにこの小屋にやってきた、という前提にしたのですが、二人がじゃれあって、この小屋にやってくる、という最初の「イメージ」がとても恥ずかしいと私が伝えます。つまり「演技をする」ということに対する恥ずかしさでしょうか。これを、押し殺さずに机の上に並べて議論したい、と考えました。例えば、高杉氏は長いこと俳優をやっているので、最初にその恥ずかしさを押し殺して演技をしても、本番になるとそれを成立させる力があります。でも、まっちゃんや恵美ちゃんにはそれがありません。そしてこの一ヶ月でそれを習得できるとも考えられない。

ならば、俳優なら、恥ずかしいなんていうんじゃない、という感じでそれっぽい演技を強要するのではなく、その恥ずかしさを克服できる動きとモチベーションを、細かく指示していけないか。ということを提案します。具体的には「出てきて服を脱ぐ」とか「カバンと瓶を取り上げて椅子の上に置く」とか「5秒見つめて近づく」とかそういうことをお願いし、それ以外のことはしなくてよいことにします。

筋を通していくと、またセリフの割り振りが変わっていきます。この部屋の電気をつける理由は何か。セックスをしたいならつけないほうがいい。そもそも知らない人の家に忍び込んでるんだからつけるわけがない。それを乗り越えて電気をつける理由は何か。

それから、小道具が実際にないと意味が伝わらないセリフ、に関しても精査してゆきます。この台本にはそういうのが結構多いのです。しかし台本の指示通り小道具を用意してしまうとだまし絵的な役の組み替えに差し障りがあるので、ほとんど別のものに置き換えている手前、意味が通じにくいセリフがたくさんあります。それをなんとなく言わずに、しっかりわかるように置き換えていく作業です。

最後に出来たところまで通しをしましたが、オープニングに何度もあった「森に分け入る」感が1回になってきました。私は細かいところばかり見て前に進めない性格なので、高杉氏が演出助手の下野くんと共に、通しの日を設定することを提案してくれます。そうそう。通しをせねばいけません。一週間後に設定し、それまでに最後まで作ることになりました。

この日は美術の夏目氏が美術の素材となるものを持ってきてくださいました。

稽古、楽しいです。子供の頃に兄弟といとこ5人で毎日遊んでた楽しさを思い出す日々です。