2017年「財産没収」」カテゴリーアーカイブ

リピート割引のお知らせ【財産没収】

多くのお客様に、もう一度見たい、とおっしゃっていただきましたので、急遽、リピート割引を設定いたしました。

8月20日(日)11:00、15:00

どちらの回も、二回目の観劇のお客様は1500円でご覧頂けます。(u25は変わらず1000円です)

予約は不要。受付にて「リピート割引希望」の旨と「お名前、1度目の観劇日時」をおしらせくださいませ。皆様のご来場をここよりお待ち申し上げております!

財産没収2017.08.12.13

さて、今日は14日。劇場入りしております。今日は12日と13日の稽古を記録しておきます。両日ともサファリのメンバー、達矢さんが、13日は音響のキョロちゃんが来てくれました。

まとめて書いてしまいますが、この2日間で、改めて、大きく、この芝居ってなんなのか、考えることになりました。高杉氏の提案です。私は逆に、小さな細い修正点が思った以上に出てきて、これはどうしたものか、と思っていました。

話しながら、まっちゃんという存在が、曖昧だったことに気がつきます。高杉氏はテネシー、えみちゃんはテネシーの姉。いずれも誰であるのかはっきりしていました。しかし、まっちゃんだけは「恋人」という非常に曖昧な存在。いわゆる象徴的な存在だったのです。

だから、どうしたって対象でしかなく、主体的なセリフや動きが出てこないのです。まっちゃん自身はもちろん人間ですから、彼が彼なりに通す筋というものはあるのですが、この芝居の中で、彼を捉えられていないことに気がつきます。

でも、「恋人」と言っても、具体的に誰かわかるものだろうか。欲望という名の電車のミッチやスタンリー。ガラスの動物園のジム。あるいはテネシーのリアルな恋人。でもどれも、この作品にとってはメタファーでしかなく、名も無き存在です。

メタファー。

もしかしたら、この男は、テネシーの、社会性の部分なのではないか。と思いつきます。高杉氏演じるテネシーがアーティストの部分だとしたら、まっちゃん演じるテネシーは、それを制御しようとする部分。堕ちていく彼を必死で引き戻そうとする役。

そうやって整理したところ、まっちゃんが、言いやすくなったセリフがいくつか出てきたそうです。高杉氏も「セックス」は「自分を一本化しようとする動き。お互いの部分を受け入れようとする動き」なんだなと言います。えみちゃんとまっちゃんが出会うのはやはり、姉と弟としてなのです。

そうやって3人が3人とも、ハッキリとして姓名を持つ個人であることがわかり、また一つ、この作品の筋が通りました。

それから、いくつかまだ残っていた「なんとなくセリフを割り振った部分」を正しく振り分けたり、新たに加わったダンスの部分のきっかけを合わせたりしました。

いよいよ小屋入りです。稽古場の解体を、サファリの達矢さんが手伝ってくれました。

 

財産没収稽古2017.08.11

この日も通し動画を見ての稽古です。舞台監督の浜村さんと照明の池辺さん、お二人の子供、かよこが稽古場に来てくれました。稽古場には、下野くんがすでに買ってくれていた「ランタン」が届いていました。この「ランタン」を持って、恵美ちゃんはお散歩するのですが、これ、もともと下野くんの持ち物で、アンティークな顔をしたまさにランタンでやってたのですが、夏目氏のアイディアででかい電球になりました。一気にその部分だけ「近未来感」が出てきます。実際に電気をつけ、歩いてもらうと、メタファー的なものは満載だと思っていたんだけど、LEDでとても冷たい明るさが目立ち、相殺されて落ち着きました。

「メタファー」というのがいかに取扱注意なものか、今回学びました。いろんなところでそれが顔を出して、面白いです。

さて、通しを見た演者からは、ダンスのシーン、目線の問題などが挙げられます。一つ一つ解決をして、通しを。

この中で一番の変更は、松本氏と恵美ちゃんの出会いの場所についてです。もともとは真ん中の一番良いところで出会っていた二人。悪くないのですが、そのために歩くスピードを調整してもらったり、センターといういわゆる王道のポジションを疑わずに採用していることに、はたと気がつきます。やはり選択は「悪くない」ではなく「それ以外ない」で選びたいもの。

歩くスピードに無理がなく、照明的にもエッジを立てやすそうな、右手の一番奥のあたりで出会ってもらうことにしました。実際やってみると、高杉氏がお酒を飲んでいるのがセンターなので、とてもかっこいい配置になりました。

写真はまだパソコンに届かないので、また今度アップします。お盆なので、もともと関西で現在は別の地在住の方は是非、里帰りついでに観劇していただきたいものです。劇研、もう閉まりますので。

財産没収2017.0808

この日の課題は4つありました。どれも、シーンとして少し気になる箇所です。それが、一つ解決すると他も解決する、という状況になってきました。さらに、今日は解決をつけるつもりがなかったところ、つまりラストシーンまで改善されました。

ラストは再び恵美ちゃんが、「外」をぐるぐる回るという終わり方をしたいと私は思っていました、しかし先日照明の池辺さんにそれがわからない、と言われたところ。そこはそのままに、

恵美ちゃんが「じゃあ、帰るわ」というセリフの扱いについて問題提起をしてくれたので、それを解決しようとした結果、私が挙げたパターンの中で、高杉氏が支持したのが、恵美ちゃんは外をぐるぐる回らない、という終わり方でした。

実際に通しでやってみると、それがとても、しっくりきました。オープニングとの相性が良いというのでしょうか。筋がすっきり通る必要はないのですが、まさに、相性が良いという感じでした。

この日は衣装の詩恵ちゃんが来てくれたので、それを着て稽古と通しをしました。見栄えは良いので、あとは動きに合わせて少しずつマイナーチェンジをしてもらいます。また、当初イメージしていたものと少し違うシルエットのものは改善されることになりました。

財産没収稽古2017.08.06

5日の稽古で、恵美ちゃんのセリフと動きが飛躍的に良くなっていたことに驚き、その日の通しで、高杉氏の俳優としての力量をまざまざと見せつけられ、6日の通しで、まっちゃんがそれに食らいつく様子を見ることができました。

こんなに、こんなに、それぞれが自立して、自分のペースで役を育てていく、自分を訓練していく、準備を怠らないメンバーと、芝居を創ることができる私は、すごいです。

さて、この日は、ほぼ作品の骨格と肉付けが終了したということで、細かく気になる点を洗っていくことになりました。椅子の数、トルソーの位置が変化したことによる立ち位置の問題、それからいくつか、小さなセリフと設定の齟齬。しかしそれも、ラストのダンスのところの曲の掛け方とダンスの内容を吟味し、口頭で幾つか演者同士で打ち合わせをしてもらって、通しをしたら、ほぼ、消えていました。

局部的な問題というのは実は少なく、すべてが影響し合っているものです。どこかがよくなると他もよくなってきます。そうやってすべてが少しずつ、よくなっていきます。反対に、問題の箇所を放置しておくと、全体的にもいつまでもよくならない。過去を振り返るとそれがわかります。

通しを、照明の池辺さんに観てもらいました。内と外、について、解釈しにくいとのこと。私の中でこの「内と外」は非常に整理されているのですが、改めてこの質問で、言葉にする機会をもらいました。

池辺さんが帰った後、改めて演者の方から、幾つかきになる点をピックアップしてもらいます。これらも、いずれも小さなことばかりなので、次の稽古で当たりましょう、ということになりました。ここからは演者たちがそれぞれの動きやセリフの制度を上げていく時間です。

俄然、本番が楽しみになってきました。

写真はいつかの稽古。

財産没収稽古2017.08.05

今日は、稽古場に朴さんと里井さんが来てくださいました。昨日の通しを経て、前半について改善点をピックアップしてゆきます。最大のポイントは高杉氏から。つまりいつ、高杉氏は恵美ちゃんと出会うのか、ということ。

松本氏が恵美ちゃんと出会うシーンはここまででしっかりと作ることができています。でも恵美ちゃんは高杉松本両氏からすると、高杉氏の妄想です。

妄想の人物と出会うとはどういうことなのか。

というわけで今までなんとなく出会ってしまっていたp3のシーンを、出会わないように立ち位置、目線などで工夫し、出会わないというふうに作り変えました。あくまで恵美ちゃんは終盤まで、高杉氏の心の中で喋っています。こうすることで高杉氏の恵美ちゃんとの距離がはっきりしただけでなく、松本氏が途中、恵美ちゃんに気づき、怯える様子までもがくっきり。すごく見やすくなりました。

あとは、恵美ちゃんに主役が移ってからのこと。どうしてもテネシー目線で物語ってしまっている箇所を、なんとか姉目線に変えられないものかと考えます。そこで、この辺りで恋人との関係性を変化させてみようと提案。そうすることで姉が変化し、それをテネシーが見てさらに変化する構図が描けました。

いざ、通し。ランタイムはいつも通りでしたが、とても良い出来でした。もっと間を取れるな、とみんなが思っている状態。いい感じです。明日以降、この通しを経て間をとったり、違和感を減らしていく作業に入れそうです。

稽古終わりにドラマツルグ的に動いてくれている朴さんが、パンフレットの内容を作りたいと提案してくれます。そこに、デザインをしている里井さんが乗ってくれて、なんと、お二人にパンフレットを作っていただくことになりました!ありがたい!

 

稽古が終わった後もしばらく、パンフレットの話から様々な情報交換や自己紹介をしました。山口的には財産没収の新しい景色を見てしまい、本当に、色々と感動した稽古になりました。

 

財産没収稽古2017.08.04

この日は美術の夏目さんと照明の池辺さんが来てくれました。お二人は前日の舞台美術ミーティングを経ての参加です。

まずは山口が「前半」と決めたところまでを通してみます。全体的に細かいお願い事を各演者にしてゆきます。発語のことから大きなコンセプトに関わることまで様々です。でもその時、トルソーの位置を少し上手にずらしたい、ということを演者に伝え忘れます。

スタートする直前に、夏目さんから「トルソーをずらしてほしい」と要望あり。ああ、そうでしたとずらし、そのまま通すと・・・案の定、たくさんの変更が加わり、混乱。

前もっていっておくべきでした。ごめんなさい。

でも見た目的には、中央にあるよりぐっと、よくなったと私は思いました。この後、前半についてもう一度みんなで細かい修正を加えつつ吟味します。そしてp3のとある箇所について停滞してしまいます。セリフの中で「あの大きな黄色い家」のことを話していたと思ったら、それが急に「この場所」のことになる、というズレです。

そのズレ自体はだまし絵的でとても面白いのですが、そこにさらに、「何か外で物音がした」という情報まで加わり、男性二人と女性一人のアクションが全く別空間のものになります。見ていてとても混乱するのですが、それをどうすれば整理するのか、あるいはわざと破綻させるのか。

考えても解決せず、通しをせねばならない時間に。それでもなんとか美術についてさらに話し合いをしました。テープをはる位置。はる意味。いつからはってあるのか。そしてランタンの役割について夏目氏から提案が。ランタンが光るか消えるかで、外と内を分けてはどうか。なるほど、です。

だいぶ時間が押した状態で、通します。大きな問題がだいぶ解決したものの、まだすっきりしない感じ。加えて細かい修正をたくさんしたい。段取り力が求められているような気がします・・・。

財産没収稽古2017.07.30

さて、7ページから。

「それが今じゃ、全くの空き家」という言葉で、この空間から人がいなくなる。という視覚的な面白さを、どうしても取りたい。そしてそこから一気にラストに流れ込んでいきたい。ところがその思惑を思いっきり遮る「一見どうでもいい会話」をどう取り扱うか。

その前に、その「空き家のセリフをもう一度吟味してみると・・・

「姉さんがその人たちと寝たりするから」

「寝たの?」

「だって「看板娘」だったんだもの。それが今じゃ、全くの空き家」

と言っています。なるほど、「空き家」というのはその家のことを指しながら、その実、姉のことを指しているのです。もう誰も来なくなった場所。男たちが寄り付かなくなった姉。

というわけでこのセリフの前に、えみちゃんに部屋の中に一歩入ってもらい、えみちゃんごと「空き家」と言ってみます。そしてこれまで、「その調査官が来た時に隠れていた」という動作を、えみちゃんにやってもらいました。つまり、調査官としてこの部屋に入り、服を脱いで、この家の住人になり、隠れるという動作をしたのです。

「隠れた」のは実はウィリーなのですが、姉が隠れることにより、ウィリーは自身を姉と同化したがっていたことが「だまし絵」的に描けます。

さらにそこから、「一見どうでもいい会話」に見えていたところで、これまで歴然とあった「境界線」をテネシーとその恋人がすっと超えます。そして、初めて、しっかりと、姉と会話をするのです。

これまで、とても苦しんでいたこの箇所が、初めて、すっきりと通りました。

そこからは一気にウィリーの妄想が激しくなっていって、ラストはこれまで通りでよしとし、通しをしてこの日の稽古を終えました。

財産没収稽古2017.07.29

さて、通しの後、話し合いを重ねて、それから初めての稽古です。

前回の稽古で、トルソーと恵美ちゃんを同一の存在とした場合に舞台に共存できないのではないか、という問題を解決するために、高杉さんと恵美ちゃんがいる時間は別で空間だけが同じであるということにしよう、となりました。しかし、「いない」ということにしてしまうと、目線の問題が大きくそれを阻みます。

本日、改めて、高杉氏と松本氏は恋人同士、同じ時空にいる。恵美ちゃんは姉として、過去のこの家にいる。恵美ちゃんは他の二人を、自分の時空にいる兄や恋人としてみているが、高杉氏や松本氏にとっては調査官であったり、亡霊である。という風に整理することになりました。

そして、恵美ちゃんには「そと」をぐるぐるとランタンを持って歩いてもらうことになりました。

帽子とコートを着用しているので、高杉氏たちからすればそれは調査官なのですが、恵美ちゃん本人としては「おでかけの格好」です。周りを、ゆっくりと歩く恵美ちゃんは、精神的に参っている姉そのものです。

そして恵美ちゃんが以前提案してくれた「板つき」スタートで行こう、と高杉氏が提案します。この場所が、空き家かどうか、どうしても分からせる必要はない、ということです。むしろわからせようと努力することが、建設的でない上に、効果的でない、と私も感じます。

また、客入れ中に恵美ちゃんが踊るという高杉氏の提案を採用します。高杉氏が「キンソンが始まったら踊り出してはどうか」といい、恵美ちゃんと松本氏がハテナ顔に。「キンソン」というのは学生劇団用語なのでしょうか。私も使ったことはほとんどないのですが、本番が始まる直前の客入れ曲のことです。ダンサーたちは全く知らなかったようで、しばらくその「キンソン」で盛り上がりました。平和です。

 

そして、恵美ちゃんと松本氏が出会うシーンを、「松本氏が怖がる」という風にすることで、エッジを立たせることにしました。二人はずっと舞台上にいるため、初めて目を合わせたとしても、初めて出会った感を出せません。ずっと見えていなかったものが急に見えたことを伝えるために、怖がってもらうと、とても良かった。松さんは普段から割とお化けが苦手なので板についていました。

そしてそこから、フォーカスする人物を、高杉氏から松本氏に変更してみようと提案します。高杉氏がいいね!と言ってくれます。「視点が変わるといいね」ということはこの稽古場で度々話してきたのですが、こういう形で実現しそうです。

つまり主役を途中で変えるということです。さて、功を奏すかどうか。

7ページまでこのルールでかなりスッキリと筋を通すことができました。しかし、7ページ目にして、停滞。ここを「空き家」である、と明言する箇所あたりから、なんともならないことがわかりました。一見、無駄話が多いこの戯曲。しかしこの「無駄」だと思っているものが、意外とものすごく考え抜かれたものであった、という経験をテネシーの戯曲で度々している私たちは、腰を据えて考えたほうが良いと判断し、明日の稽古に持ち越すことにしました。

テネシー・ウィリアムズ。時代の洗礼を受けて残ってきただけの人です。本当に、やればやるほどこの戯曲を好きになってゆきます。

さて、毎日毎日、どんどん、面白く、筋が通っていきます。毎回の稽古が、とても刺激的で面白いです。全員がアイディアを余すところなく出し合っています。下野くんも、毎日クーラーやら扇風機やら、この部屋を涼しくするためにたくさん考えてくれます。なんというか、つかの間のものだからこそかもしれませんが、無駄のない稽古場です。

というわけであえて、無駄に挑戦。恒例のストレッチ教室。

2年前はブリッジを理想の形に近づけるという努力をしましたが、今回は恵美ちゃんの体と同じ状態になるべく、不肖山口毎日ストレッチを重ねております。この姿を見て、高杉氏が「野菜と肉ぐらい違う」と言い放ちました。「フェラーリと軽トラ」とも。悔しいです。