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京都市民読書会とサファリ・Pの特別コラボ読書会『悪童日記』開催決定!

 東京に続いて、京都でも『悪童日記』読書会の開催が決定しました。京都市民読書会さんのご協力で実現しました。ありがとうございます。
 ゲストには『悪童日記』やカズオ・イシグロ「わたしを離さないで」の編集者でいらっしゃる早川書房の山口晶さんにお越しいただけることになりました。『悪童日記』八尾公演か京都公演のチケットがついたお得なイベントです。皆さんのご来場をお待ちしております。

以下、京都市民読書会さんからのご案内です。

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2017年にサファリ・Pが京都・東京・松山で上演した「悪童日記」の再演を記念して、特別読書会を京都・恵文社一乗寺店で開催します。

読書会には、クリストフ『悪童日記』やイシグロ『わたしを離さないで』の編集者・山口晶さん(早川書房)と、サファリ・Pの舞台「悪童日記」の演出・山口茜さんをゲストとしてお迎えします。読書会前に大阪・京都である舞台「悪童日記」の鑑賞チケット付きの読書会となっていますので、舞台と小説、二つの「悪童日記」を参加者の皆さんと共有することのできる場にしたいと思っています。
参加申込者が多数となることが予想されますので、お早めにお申し込みいただくようお願いします。(定員に達し次第受付を締め切らせていただきます。)
たくさんの方のご参加をお待ちしています!

【課題本】
アゴタ・クリストフ『悪童日記』 (堀茂樹訳/ハヤカワepi文庫)

【開催日時】
2019年3月1日(金)19:00~21:00(開場は18:30)

【場所】
京都・恵文社一乗寺店

【ゲスト】
山口晶氏 プロフィール◉2003年、株式会社早川書房入社。編集本部長。海外の小説・ノンフィクションを主に担当している。主な担当作品に、カズオ・ イシグロ『わたしを離さないで』、A・J・フィン『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』、デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』、ラッタウット・ラープチャルーンサップ『観光』、ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上・下)』

山口茜氏 プロフィール◉劇作家、演出家。1999年トリコ・Aプロデュースを立ち上げ、以後年に1回から2回のペースで、自身の劇作、演出である演劇作品を上演している。2003年第10回OMS戯曲賞大賞受賞、2007年若手演出家コンクール2006最優秀賞受賞、2007年から2009年までの2年間、文化庁新進芸術家海外留学制度研修員としてフィンランドに滞在。2012年文化庁芸術祭新人賞受賞。2013年龍谷奨励賞受賞。2015年利賀演劇人コンクール優秀演出家賞一席受賞。2015年よりアトリエ劇研アソシエイトアーティスト。2016年よりセゾン文化財団シニアフェロー。

【参加費】
4000円(参加費には、舞台『悪童日記』の鑑賞チケットと読書会の場所代等が含まれます。)

【鑑賞チケットについて】
ご都合の良い会場と日程を以下よりお選びいただけます。

〈大阪公演〉
2019年2月10日(日) 15:00開演
会場:八尾プリズム小ホール(八尾市文化会館)

〈京都公演〉
2019年2月28日(木) 19:30
    3月  1日(金) 13:00
会場:京都府立文化芸術会館 ホール

なお、通常チケットを購入される場合は下記の価格となっています。

前売 3000円
当日 3500円
ペア割 5000円

詳細は、サファリ・P「悪童日記」予約ページをご確認ください。https://ticket.corich.jp/apply/95959/

【当日の流れ】
当日は、ゲストの方を交えて課題本について感想を話し合い、その後に、ゲストの方のお話を伺います。質問の時間も出来る限り設けたいと思います。

【申し込み方法】
次の申込フォームよりお申し込みください。https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeCZy2Hdb-FkeN_PXvWup15SLYgQLo5xeOP3wkWK3QUeG3Hpw/viewform?usp=sf_link

【注意事項】
舞台の鑑賞と読書会への参加がセットの企画となっていますので、仮に読書会のみへの参加であっても料金は同一となります。

【主催】
サファリ・P + 京都市民読書会

『悪童日記』FEMART festival(コソボ共和国)参加決定!

 サファリ・Pの舞台作品『悪童日記』が遂に海を渡ります!

 コソボ共和国で開催されているFEMART festivalに招待していただいたのです。過去のフェス動画を拝見したのですが、あまりの熱狂に「これが本当にアートフェスなのか!?」と衝撃を受けました。パンクバンドのライブのような会場の熱気と観客とパフォーマーの一体感に鳥肌が立ちました。あの環境でやれることが楽しみでなりません。

 我々の『悪童日記』には、そのエネルギーに負けない力があると思います。海外公演を視野に入れ、「身体性」と「音としての声」を突き詰めた超感覚的作品なので、日本語が分からなくても楽しんでいただけるはず。2019年6月、コソボ共和国プリシュティナにて。待ってろ、Oda Theater!

 

FEMART festivalホームページ

FEMART festival


コソボ共和国に拠点を置くNGO、artpolisによる女性芸術家の芸術祭で、
コソボ共和国の首都プリシュティナにて開催。
女性芸術家によるバルカン半島における人権や社会問題に基づいた作品を提供することにより、コソボの女性たちが抱える問題を来場者たちに発信してきた。
200人を超えるあらゆる場所・ジャンル・経験の女性芸術家が参加予定。
過去の実施実績では、5000人以上の観客と100以上のメディアレポートがある。
市民社会組織が交流し、新たな芸術作品の創造へとつながっていくプラットフォームとしても機能している。

 

瀬戸内国際芸術祭2019参加『悪童日記』

下見レポート(2019.1.22)

サファリ・Pは『悪童日記』で瀬戸内国際芸術祭2019に参加させていただくことになりました。秋会期の10月5日土曜日です。高松市にある四国村の農村舞台で上演させていただきます。

先日は出演者と音響の森永さんと演出の山口で下見に行ってまいりました!

四国村には「かずら橋」という吊り橋があります。この吊り橋が、グラッグラの吊り橋なんです。『悪童日記』を観る前に、ご来場のお客様にこの橋を渡ってもらえたらいいかもしれないですね、と高松育ちの大垣さん(芸術祭コーディネーター)。

今回の悪童日記は、著者、アゴタ・クリストフの人生が透けて見えるような演出を考えています。完全に木だけで作られた吊り橋を見ながら、赤子を抱きハンガリーからスイスへ亡命したアゴタに、思いを馳せます。

吊り橋に叫び声をあげる俳優陣を尻目に、山口は迂回して山道を歩いて農村舞台へ。見事な茅葺きの農村舞台、圧巻。600席の客席(この椅子は春に撤去。見納めだそうです)にすわってぼんやり舞台を見つめるキャスト、スタッフたち。達矢さんだけはカメラ目線。

その後、芸術祭の事務所で打ち合わせをいたしました。そこで頂きました、今年もやっぱり、シュッとしたかっこいいパンフレット。しっかりサファリの写真を掲載していただいておりました

                    ⇩ ⇩ ⇩

打ち合わせを終えた私たちは、そのまま山の上にある公園へ向かい、遊具で思いっきり遊んだ後、その日は高松にて宿泊。翌日、やっぱり公園へ向かった私たちは、瀬戸内の素晴らしい景色を目撃しました。

このフォトジェニックな瀬戸内に、どんな風に『悪童日記』を組み合わせましょうか。今から楽しみです!皆さま、2019年の秋は是非、瀬戸内へ!

瀬戸内国際芸術祭2019公式ウェブサイト

悪童日記特設サイト

PPP関連企画「達矢のブレイクダンス講座」終わりました!

 「悪童日記」八尾公演は八尾プリズムホールさんの演劇支援事業(Prism Partner’s Produce)に採択されています。その関連企画として1月13日にワークショップをさせていただきました。八尾市民の皆さんに文化的営みとして還元し、またプリズムさんの事業やサファリ・Pの活動を周知すべく頑張ってきました。と言っても、頑張ったのは達矢くんであって、私(高杉)は写真取ったり、お弁当食ったりしてるだけの憐れな四十男です。それでも「爪痕を残さねば!」と普通に、フルで参加して、踊り狂ってきました。ブレイクダンス、初体験! 実は稽古場で「ウィンドミル」「トーマス」という二つの技には挑戦しているのですが、基本のステップなどは初めてで、すごく楽しかった。クルクル回るイメージが強いブレイクダンスですが、それは技の一部であって、それが出来なくてもちゃんとブレイクダンスを体験できました。

 参加いただいた市民の皆さんも同じ気持ちだったようです。「こんなワークショップ、またやらないんですか?」「めちゃくちゃ楽しかったです!」「実は僕、カポエイラ日本2位です」それはもうポジティブなご意見をたくさんいただきました。年齢も11歳〜74歳まで! これが市の文化施設の底力! 我々では絶対に集められない幅広い客層。年齢も性別も経験も越えて、みんなでいい汗流しました。かかってこい、筋肉痛!!!

高杉征司

『悪童日記』翻訳者・堀茂樹氏より推薦文をいただきました!

 『悪童日記』の八尾公演まで1ヶ月を切り、稽古も情宣も熱を帯びてきたこのタイミングで、小説『悪童日記』の翻訳者である堀茂樹氏より推薦文をいただきました!
 小説『悪童日記』について、またそれを踏まえてサファリ・Pの舞台『悪童日記』は何だったのか、そして原著者アゴタ・クリストフの生前の生の声。『悪童日記』を愛し、アゴタと親交の深かった堀さんにしか書けないであろうこの文章は必読です。


身体表現による「文体」の変奏

 アゴタ・クリストフの『悪童日記』はすぐれて演劇的な小説である。
 全体を構成する計62の章がそれぞれ一幕の寸劇風だ、というだけのことではない。この小説は始めから終わりまで、作中人物の行動および見聞を証言する言葉と、台詞の提示だけで成り立っているのだ。ふつうの小説にあって、演劇にはないもの、すなわち、作者の視点からの情景描写が一切なく、心理描写や性格描写もない。したがって読者は、ちょうど劇場の舞台上のアクションに立ち会う観客のように作中人物の動きを追い、外からは説明されることのない物語に引き込まれていく。
 この演劇的状況が露わにするのは、地上世界にいきなり投げ出されて、超越的視点を持ち得ず、不透明な現実の中を手探りで前進するしかない世界内存在としてのわれわれ人間の実存にほかならない。そこにはまず身体があり、苛酷な生存条件の設定の下で剥き出しになる暴力、セックス、死があり、さらに優しさ、怒り、そして底知れない悲しみがある。そのすべてに、この小説独特の言葉、「事実の忠実な描写」に徹する言葉が、まるで物質のような存在感を与えている。
 2017年3月~4月に劇団「サファリ・P」が山口茜氏の演出で上演した『悪童日記』は、「文体を舞台化する」と謳い、原作からそのエッセンスともいえる身体性と言葉を抽出し、小劇場の抽象性の高い舞台空間の中で、おそるべき運動量の身体表現(台詞を伴う)によってアゴタ・クリストフの文体を変奏した独創的作品だった。
 2011年7月27日に逝ったアゴタ・クリストフは、1995年の来日時、私的会話の中で、演劇人が自分の小説を自由に読み込み、自分に斟酌することなく解釈し、自由に変奏するのを歓迎する、という意味のことを話していた。もし彼女がまだ生きていて、「サファリ・P」のあの『悪童日記』初演を観たなら、非常に興味を覚え、喜んだにちがいないと私は思う。
 今年の再演では、演出に新機軸が加わると聞いている。大いに楽しみだ。

堀 茂樹
(2019年1月16日)

 

 

『悪童日記』読書会【東京】 開催決定!

 悪童日記ツアー2018も最初の開催地【大阪・八尾】まで一ヶ月を切りました。

 稽古は順調で、しかしここに言う「順調」とは必ずしも字義通りではなくって、行き詰まり、立ち止まり、振り返り、膝から崩れ落ち、辛酸を嘗め、気が付いたら自分でも聞いたことのない変な声が出ている、そんな状況が産みの苦しみとして、過程としてある、そういう意味での「順調」なのです。それはもう順調なのです。
 そうやって創った作品はやはりたくさんの方に観ていただきたいし、観ていただいたからにはより深く味わっていただきたいのです。そこで何か出来ることはないかと思案した結果、「そうだ、人に頼ろう!」ということになりました。ウソです。「読書会をやりたいな」ということになりました。そこで早川書房さまに打診したところ、左サイドを駆け上がるジョルディ・アルバのようなスピードでご対応いただきました。そしてご紹介いただいたみんなの読書会さまにもご快諾いただき、井上尚弥のジャブのような目にも止まらぬスピードであっという間に開催へと漕ぎ着けました。心より感謝いたします。

以下、詳細!


2017年に京都、東京、松山で上演し、高評価を得た作品『悪童日記』をサファリ・Pが第5回公演として再演することが決定!
その記念イベントとして、名作『悪童日記』 (アゴタ・クリストフ)を課題本にした読書会を開催します。
読書会には、翻訳者の堀茂樹さん、演出家の山口茜さんをゲストにお招きし、参加者がより本作品を深く味わうためのトークイベントも行います。

さらに、『悪童日記』読書会に参加された人には第5回公演を鑑賞できるチケットを特別にご提供!!
これは参加するしかありません!
(参加予定が会場上限を超えた時点でお申込みを締め切らせていただくことがございます)

<課題作品>
『悪童日記』 (ハヤカワepi文庫)
著者:アゴタ・クリストフ
翻訳:堀茂樹
出版社:早川書房
価格:713円(税込)

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/310002.html

内容紹介:
戦火の中で彼らはしたたかに生き抜いた――
大都会から国境ぞいの田舎のおばあちゃんの家に疎開した双子の天才少年。
人間の醜さ、哀しさ、世の不条理――非情な現実に出あうたびに、彼らはそれをノートに克明に記す。
独創的な手法と衝撃的な内容で全世界に感動と絶賛の嵐を巻き起した女性亡命作家のデビュー作。

<企画の詳細>
・日時:
 2019年2月14日(木)20時~22時まで
 ※開場は19時45分から

・場所:
 早川書房1F「カフェ・クリスティ」(JR神田駅北口より徒歩2分)
 東京都千代田区神田多町2-2 
 tel:03-3258-3800

・ゲスト
 堀茂樹:1952年、滋賀県生まれ。慶應義塾大学名誉教授。
     早稲田大学教育学部、慶應義塾大学文学研究科修士課程を経て、
     フランス政府給費留学生としてソルボンヌに学ぶ。
     帰国後、慶應義塾大学文学部助教授、同大学総合政策学部教授。
     アゴタ・クリストフ『悪童日記』などの翻訳者として知られる。
     主な訳書にヴォルテール『カンディード』、トッド『「ドイツ帝国」
     が世界を破滅させる 日本人への警告』、『シャルリとは誰か?
     人種差別と没落する西欧』、著書に『今だから小沢一郎と政治の話をしよう』
     『グローバリズムが世界を滅ぼす』(共著)など多数。

 山口茜:劇作家、演出家。1999年トリコ・Aプロデュースを立ち上げ、
     以後年に1回から2回のペースで、自身の劇作、演出である演劇作品を上演している。
     2003年第10回OMS戯曲賞大賞受賞、2007年若手演出家コンクール2006最優秀賞受賞、
     2007年から2009年までの2年間、文化庁新進芸術家海外留学制度研修員としてフィンランドに滞在。
     2012年文化庁芸術祭新人賞受賞。2013年龍谷奨励賞受賞。
     2015年利賀演劇人コンクール優秀演出家賞一席受賞。
     2015年よりアトリエ劇研アソシエイトアーティスト。
     2016年よりセゾン文化財団シニアフェロー。

・参加費:
 5,000円(1人)
 参加費には、読書会での飲食費、および公演の鑑賞チケット(*)も含まれます。
 
【(*)鑑賞チケットについて】
サファリ・P 第5回公演
『悪童日記』
<横浜公演>
2019年2月16日(土)19:00※1
2019年2月17日(日)14:00※2□ 開演
 ※の回はポストパフォーマンストークを開催します。
 ゲスト:※1 西尾佳織氏(鳥公園主宰/劇作家・演出家)
     ※2 堀茂樹氏(慶應義塾大学名誉教授、翻訳家、専門はフランスの思想と文学)
     □/聴覚障碍者向け字幕サービス有(要予約・人数制限あり)
会場:横浜美術館 レクチャーホール
TPAMフリンジ参加

<当日のながれ(予定)>
19時40分 受付開始
※2月16日、17日のいずれかご希望するチケットをお申し付けください。
20時00分 読書会開始
※5人前後のグル―プに分かれて、課題本のディスカッション
20時50分 イベントトーク
     ゲスト:堀茂樹さん、山口茜さん
     質疑応答 
21時40分 終了 

<参加するには>
① 課題本を事前に読んでください
② Facebook・Peatix・Meetup・mixi いずれかからお申込みください

<ご注意事項>
他の参加メンバーに対し、商品等を販売・斡旋しようとしたり、
読書会とは関係のないビジネスへ勧誘したりするなどの目的での参加は認めておりません。
イベントの様子は後日みんなの読書会のSNSで公開することがございます。

<主催>
みんなの読書会 事務局
※各種お問い合わせは、各サイトの「みんなの読書会」までご連絡ください

<こんな方が参加されています>
・メインの参加層は20~30代の社会人が中心です
 学生~50代まで幅広い層もいらっしゃいます
・男女比は、40:60です
 他の読書会よりも女性が若干多い傾向です
・初参加の方も3割程度いらっしゃいます
・本や書店が好きな方が多いのが特徴的です
 
※過去のイベント実施は、みんなの読書会Facebookページをご確認ください
 https://goo.gl/xlrgBR

高杉と往く「財産没収」2018 稽古の旅③

 いよいよ「財産没収」2018のツアーが始まった。

 松山から始まるのだけど、実はその前に12月1,2日と京都で試演会をして、途中経過をお客さんに観てもらった。「work in progress」といって、完成前に観てもらうことで完成度を高める効果がある。曲がりなりにもお客さんに観せるのだから、そこに帳尻を合わせて創作することになる。人間はどうにもリミットに帳尻を合わせるようにできていて、それは自覚的に「ま、いっか」と先延ばしするでもなく、無自覚にそうしているからタチが悪い。なので、試演会を設定してリミットを早めると、その分前倒しで形になっていく。一度形になったものは全体像が見えやすく、自分たちの創ったものが何なのか? 創ろうと思ったものとどの程度隔たりがあるのか? 意図しない果実があるのか否か、など判断がつきやすく、修正も入れやすい。
 それに加えて「観客の目」というのが非常に重要になってくる。稽古場の中では作品は完成しない。人目に晒して初めて作品となる。それは「作品を作品と認知する『観察者の目』がないと、作品は作品として存在できない」という物理学的・哲学的問いでもあり、しかし我々がもっと大切にしているのは「観客の目が自分たちの創ったものに輪郭を与える」という点だ。不思議なもので、我々は長い時間をかけて思考を巡らせ、言葉を尽くして創作に取り組むのだが、つまり自分たちが一番この作品に詳しいはずなのだが、観客の前で披露してみて「あ、この作品って@@@なんだ!?」と初見の観客に気づかされることが多い。それは思いがけず作品を覆ったテーマであったり、個々のシーンの意味だったり、個々人の人格の役割だったり、笑いを生み出すポイントだったり、大きなことから小さなことまで様々だ。観られることで客観性が生まれ実感してみたり、彼らの反応に教えられてみたり。言葉を交わさなくても、観られるだけで色んなことを感じられるこの稀有な本番体験が作品を成長させる。それを本番に前倒して行うことで、本番の段階でのスタートの完成度を上げよう、という試みがこの試演会なのだ。

 小さな会場にギュウギュウに集まってくれた観客の皆さんの前で、思いっきり演じてみる。劇場には何かがある。それが何かは分からないけれど、確実に何かがある。変な言い方をすると「霊力が宿っている」。幽霊がいるとかいないとか、そういう話ではない。本番が近づく緊張感や音響・照明の効果が与えてくれる力、それは間違いなくある。でもプラスαの何かを感じる。ヒリヒリする。
 共演者の二人も存在に輪郭が出てくる。クッキリと存在している。「ここにいる意味を感覚的に知ってしまった身体」。もっと言えば「意味があろうとなかろうと、私はここにある」という根本的な説得力を持っている。そんな我々を見つめる無数の目。その目の数だけ解釈があり、それらはどれも正しく、どれも正しくない。そして多様な解釈の集合体であるはずの観客は、なぜか「一致団結して」我々の眼前に立ち塞がる。それから逃げたり目をそらしたりすると、せっかく彼らが無意識に教えてくれることを取り逃がしてしまう。屹立し、そのリスクに向き合って、初めて果実を手にすることができる。
 試演会終わりの合評会でそんなことを考えていた。観客は作品の鏡。そこで見えたことを汲み取って、松山に繋げていく。さらには沖縄、東京へ。観客が変われば作品の印象も変わる。我々も日々変わっていく。結局、どこまでいっても変化し続けていく。そういう生きた作品を創っていきたい。

 12月5日。京都芸術センター最後の稽古は「公開通し」。明倫ワークショップとして市民に公開の義務がある。公開稽古でもいいし、ワークショップをしてもいいのだけれど、我々が選んだのは「通し稽古」。松山へ出発する前の最後の稽古、最後の通しを公開することにした。これは今までなかったことで、やってみて非常によかったと感じている。試演会で感じたことを作品にフィードバックして再創作し、それを本番前最後の通しとしてさらに公開する。このタイミングでさらに観客の目に晒され、緊張感を持ってプレイできる。自分たちが再創作したものが何だったのかも、薄ぼんやりとではあるが自覚できる。参加者の皆さんは本当に熱心に観てくださって、作品に、我々に輪郭を与えてくださった。感謝します。

 そして今週末は初めての沖縄公演! ワークショップもやります! 素敵な出会いに期待!

サファリ・P 第5回公演『悪童日記』チケット発売開始!

本日2018年12月1日よりサファリ・P 第5回公演『悪童日記』のチケット発売開始!

原作翻訳者である堀茂樹氏をして「今はもう地上にいない原著者アゴタ・クリストフに観せたかった」と言わしめ、追加公演も行ったサファリ・Pの代表作を再演します。演出・演技をさらに研ぎ澄ました上で、双子の一人を女性とし、作者アゴタの孤独を掘り下げてさらなる深みへと潜ります。

「私たちはヒトラーと、どう違うのか」

『悪童日記』という小説に満ち満ちた「言葉を持たないための言葉」からは、言葉を信じられない今の世界への切実な問いが滲み出します。

皆様のご来場をお待ちしております!

公演詳細・ご予約はこちら

高杉と往く「財産没収」2018 稽古の旅②

 稽古する。飯食って、クソして、寝る。それを幾度か繰り返していたら、アッと言う間に明日から小屋入り。早い! 光陰矢の如し! 「矢」と言えば「達矢」くん。ブレイクダンサーだが、いろんな表現形態に興味を持っていて、お芝居も気に入ってくれている。私にトーマスやウィンドミルといったブレイクダンスの技も教えてくれる。教え方の特徴は「飴」と「チョコ」。ずっとべた褒め。ダメだよ、達矢くん、虫歯になっちゃうよ! 達矢くんの「飴」や「チョコ」を求めて、最近では佐々木ヤス子さんもウォーミングアップに達矢presentsブレイキング講座を取り入れた。私の視界の端っこでクルクルと回っている。っていうか、うまいな、佐々木ヤス子! クルクルしてるやん、クルクル!?

佐々木「ちょっと気持ち悪いです・・・」

三半規管は弱いようだ。

 

 どうも舞台が小さい気がする。ちょっと動いたら人にぶつかるし、振り返れば壁・・・絶対に前回公演より縮小されている。舞台監督の浜村くんに詰め寄る私。前回と全く一緒だと舞台図を見せる浜村くん。腕を組む二人。沈思黙考。結論が出た。

「達矢くんがデカいんだ!」

な訳あるか!
確かに初演・再演に出演した松本くんは小さかった。だとしても、だ。

いや、やっぱりこいつがデカいんだ・・・

 佐々木ヤス子さんが歩いている。それはもう歩いている。あとをつけてみる。ストーキングではない。共演者にストーキングはしない。いや、共演者以外にもストーキングはしない。私はストーキングをしないタイプの人間だ。信じるかどうかはあなた次第だ。彼女があまりに完璧なので化けの皮を剥がしてやろうとつけている。芝居はうまい、セリフもすぐに覚えてくる、演出の言葉への反応も抜群、ユーモアがある、人の意見はいったん受け入れる、性格がいい、笑顔が素敵 etc.etc これは達矢くんにも共通のことだ。なんだ、この二人は。一緒にいると俺の浅ましさが際立つではないか!? マジ、天使かよ!? いや、そんなはずはない。人間とは生まれながらにして罪を背負っているのだ。生きていること、それ自体が罪悪なのだ! おっ、芸術センター北館の建物と壁の隙間に入っていくぞ。これはとんでもない秘密があるに違いない。架空請求の証拠を隠しているのか!? 悪口を吐き出す穴を掘っているのか!? ジリジリと距離を詰める。思い切って飛び込んでみる。

高杉「キョキョキョキョキョッ! 人間なんて一皮むけば皆一緒よ〜!」

彼女は猫にエサをやっていた・・・
根本的に違うのだ、俺と彼女は。優しいんだ、本当に。マジリスペクト。

そんなこんなで絶賛稽古中! 
みなさんのご来場をお待ちしております!

『財産没収』ドラマトゥルギー・ノート その二
~時代背景について~

 サファリ・Pのドラマトゥルクを務めております朴といいます。このドラマトゥルギー・ノートでは、サファリ・Pの『財産没収』の作劇術(=ドラマトゥルギー)について、3つの要素に絞って紹介をしています。今回は『財産没収』という戯曲が書かれた時代背景について論じます。


写真/サファリ・P 第3回公演『財産没収』より 撮影/堀川高志(kutowans studio)

 『財産没収』が出版されたのは1941年6月19日。アメリカが第二次世界大戦に参戦するほぼ半年前です。同年12月8日(アメリカでは、12月7日)に日本軍による真珠湾攻撃が行われました。この劇のト書きの中には、時代が何年頃であるかの記述がありません。劇中で少女ウィリーが口ずさむ歌You’re the Only Star in My Blue Heavenはジーン・オートリー(1907-1998)によって作詞作曲され、1936年に発表されています。そのためこの劇の「時間」は1936年から1941年の間であると推定されます。

 この作品のテーマソングを歌うジーン・オートリ―は、「The Singing Cowboy:歌うカウボーイ」の愛称で呼ばれた、米国を代表する国民的カントリー&ウェスタン・シンガーかつ西部劇俳優でした。日本では、「Here Comes Santa Claus/サンタクロースがやってくる」、「Rudolph The Red Nosed Reindeer/赤鼻のトナカイ」、「Frosty The Snowman/フロスティー・ザ・スノーマン」などの戦後リリースされたクリスマスソングでよく知られています。ちなみに、You’re the Only Star in My Blue Heavenは、ベスト盤等にも収録されておらず、彼の歌の中ではあまり有名ではありません。

写真/サファリ・P 第3回公演『財産没収』より 撮影/堀川高志(kutowans studio)

 当時の時代背景について、具体的には1920~40年代の戦間期のアメリカのことをより掘り下げてみます。1920年代のアメリカは「狂乱の時代」と呼ばれ、大きく栄えました。アメリカは第一次世界大戦で強力な債権国になり、好景気を背景に大衆消費社会化が一気に進みました。自動車と映画が普及し(自動車の価格は10年代の3分の1となり、映画は27年にトーキー化され、29年にアカデミー賞が発足)、ジャズと雑誌も流行します。当時は「ジャズ・エイジ」とも言われました。ニューヨークでは建築ブームが起こり、エンパイア・ステートビルやクライスラー・ビルが建築されます。また、1920年には女性参政権が確立し、フラッパーと呼ばれる自由奔放な女性たちも現れました。1920年には禁酒法も制定されますがアルコールを求める人々は絶えず、シカゴのアル・カポネに代表されるギャングによる全米の酒類密輸と組織犯罪の勃興に繋がっていきます。

 政治的には、歴代最低と言われる大統領ハーディングと、なにもしない「サイレント・キャル」クーヴァ―が続き、1929年10月24日、「暗黒の木曜日」と呼ばれる株式暴落が始まり大不況が起こりました。1931年までに4000以上の銀行が倒産、1933年には実質生産は3分の1減り、失業率は25%に達します。絶望が全米を支配する中、1932年に当選したフランクリン・デラノ・ローズヴェルトは政府が積極的に市場経済に関与する「ニューディール政策」で、公共事業や職業訓練等を積極的に行います。以上みてきたとおり、30年代のアメリカは20年代の好況から急転直下した不況のどん底にありました。『財産没収』のウィリ―のような、かつて華やかな生活を垣間見た貧しい少女は実際に数多く存在していたのです。ちなみに、前回少し言及したのですが、アメリカ南部には「名誉の文化」という特有の文化があり、テネシーの作品に大きな影響を与えています。これに関しては、東京公演時、上演前に私が行う解説トークで話そうかと思っていますので、ぜひおいでください。京都・愛媛・沖縄でご覧になる方で、もし気になる方がいらっしゃいましたら、サファリ・PのSNSで聞いていただければそこでもお答えします。

写真/サファリ・P 第3回公演『財産没収』より 撮影/堀川高志(kutowans studio)

 次回は、これまでほぼ論考がないサファリ・P独自の演技・演出について書きたいと思います。観劇してくださるみなさまの感想が「むずかしい」で終わらないように、どういうところに目を向け耳を澄ませばよいかを論じます。ご期待ください。

 

筆者:朴 建雄

ドラマトゥルク。演劇が必然的に抱え込む様々なあわいを活性化することに関心があり、創作過程と観劇体験の両方を深めるため合同会社stampの演劇製作に関わる。こまばアゴラ演出家コンクール2018実行委員会事務局長。2018年、クロード・レジ演出『夢と錯乱』の劇評により、ふじのくに⇄せかい演劇祭2018劇評コンクール最優秀賞受賞。